2014 Fiscal Year Annual Research Report
感染性の超分子集合体:メカニズムの解明および時間発展の分子論的制御
Publicly Offered Research
Project Area | Dynamical ordering of biomolecular systems for creation of integrated functions |
Project/Area Number |
26102546
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
杉安 和憲 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80469759)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 超分子ポリマー / 非平衡系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の開始以前に、我々は超分子集合体の形態変異を伴う『感染現象』を偶然発見していた。この現象は、ナノ粒子状集合体から繊維状集合体への形態転移を伴って進行するが、これはプリオンプロテインが構造変異し、アミロイド繊維として沈着していく過程と非常に類似している。したがって我々の超分子集合体は、生命現象の複雑性を紐解くために有用な人工モデルとなり得ると考えた。本研究では、上記の興味深い現象をつぶさに探査し、メカニズムを分子論的に解明することによって、最終的にはその時間発展過程を自在にプログラミングすることを目的とした。 平成26年度は、既に報告している分子(1M)の構造を改変し、分子構造が分子集合の熱力学的パラメータに及ぼす影響を調べた。その結果、立体障害の大きさによって、時間発展現象を制御できることを見いだした。立体障害が小さな分子(1S)は、ナノ粒子状集合体を経由せずに直接に繊維状集合体を形成した。一方、立体障害が大きな分子(1L)は、ナノ粒子状集合体を形成したまま、それが繊維状集合体に形態転移することはなかった。すなわち、新しく合成した分子はいずれも時間発展現象を示さなかった。 そこで我々は、1Mと1Lを混合してナノ粒子状集合体を調整し、その時間発展現象を追跡した。その結果、このナノ粒子状集合体は、ラグタイムを伴って、1Mの繊維状集合体と1Lのナノ粒子状集合体へと分離した。興味深いことに、このラグタイムは1Mと1Lの混合比によってプログラムできることが分かった。さらに、この時間発展プログラムは、サンプルの調製法によって上書きできることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請時点では、本現象は非常に複雑であり、その時間発展現象をプログラムするための分子設計指針を明らかにすることは困難に思われた。しかしながら、このシステムは絶妙な熱力学的安定性のバランスの上に成り立っており、小さな分子構造の改変が、熱力学パラメータに大きく影響することが分かった。複数の分子を設計することによって、分子構造と時間発展現象の相関がある程度理解できた。この結果に基づいて、当初目的とした時間発展プログラムに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度で、分子構造と分子集合体の安定性の相関がある程度明らかになった。また、時間発展プログラムに関しても第一段階は成功した。27年度は、さらに複数の分子を合成し、分子集合体の時間発展現象について理解を深める。 近年、システムケミストリーと定義される新しい分野が勃興している。この研究分野のポイントは、複数の平衡を交錯させることによって、熱力学的には生じない現象や物性を発現する点にある。本研究にシステムケミストリーのアイデアを取り入れることによって、超分子集合体を用いた新しい材料創製を狙う。
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Research Products
(14 results)