2014 Fiscal Year Annual Research Report
微量複雑海洋天然物の合理的構造単純化及び作用解析
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
26102708
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
不破 春彦 東北大学, 生命科学研究科, 准教授 (90359638)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 海洋天然物 / マクロリド / 細胞増殖阻害作用 / 作用解析 / 標的分子探索 / 全合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋マクロリド天然物イリオモテオリド-2aの全合成研究:我々は既に本天然物の全合成に必要な部分構造の合成を完了したので,本年度は部分構造の連結及び全合成の達成を目標とした。C6-C18部分構造とC19-C28部分構造とを鈴木ー宮浦反応により連結し,同時にC18-C19三置換オレフィンの立体制御構築を収率よくかつ立体特異的に行った。続いてC1-C5部分構造を山口法によるエステル化を用いて導入したあと,閉環メタセシス反応により大環状骨格を収率よく形成した。このときC5-C6二重結合の幾何異性はE/Z = 5:1程度で,所望とするE体を優先した。最後に保護基の除去を行ったが,この際にアシル転位反応が副反応として起こり,目的とするイリオモテオリド-2a提出構造式のほかに,環拡大した異性体を得た。これら化合物を分取HPLCにて分離・精製したところ,提出構造式の合成品のNMRスペクトルが天然物のものと一致しないことが明らかとなった。 ネオペルトリドの蛍光標識類縁体の合成:我々は既に本天然物の構造活性相関を網羅的に解析することに成功しているので,その結果をもとに蛍光標識化合物の設計・合成を行った。具体的には,天然物のC11位ヒドロキシ基を足がかりとした類縁体及びC16位をアジド基で修飾した類縁体をもとに,適切な長さ・種類のリンカーを介して蛍光団を導入することにした。C11位ヒドロキシ基をウレタン化し,2種類の長さのアルキル鎖を介してフルオレセインジアセテートを導入した類縁体の合成を完了したが,細胞増殖阻害作用を顕著に失う結果となった。一方,C16位アジド体をHuisgen付加環化反応に付してフルオレセインジアセテートを導入した類縁体は弱いながら細胞増殖阻害作用を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イリオモテオリド-2aの全合成:提出構造式に誤りがあることが分かった点は想定外であったが,当初計画通り,全合成終盤の部分構造のカップリング(鈴木ー宮浦反応,山口法によるエステル化)及び閉環メタセシス反応による大環状骨格構築を達成することができた。天然物は提出構造式の立体異性体である可能性を考えているので,本年度までに確立した全合成戦略を応用することで,天然物の全合成と全立体配置の決定を成し遂げられるものと考えている。 ネオペルトリドの蛍光標識類縁体の合成:天然物の構造活性相関解析の結果から示唆された2箇所の修飾点についてフルオレセインジアセテートの導入を試み,C16位がより好ましい修飾点であることを見出した。今後,リンカーの最適化を行えば,ライブセルイメージングの実用に耐える蛍光標識化合物を取得できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
イリオモテオリド-2aの全合成:本年度の研究により,提出構造式の誤りが明らかとなった。現段階では,天然物に含まれる不斉中心の帰属に誤りがあるものと考えている。今後,合成品と天然物とのNMRスペクトルデータの詳細な比較検討により帰属の誤りが考えられる箇所を特定する。必要に応じて分子力場計算等の計算化学的手法を取り入れる。最終的には,構造改訂を行い,全合成により天然物の全立体配置の決定を行う。 ネオペルトリドの蛍光標識類縁体の合成:本年度の研究により,C16位を修飾して蛍光団を導入する方針が適当であることが分かった。今後は,蛍光団がリガンド部分と標的分子との相互作用を阻害しないよう,適切な長さ・種類のリンカーを検討し,充分な強度の細胞増殖阻害作用を示す蛍光標識類縁体の取得を目指す。
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Research Products
(13 results)