2014 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子を標的とした新規機能性低分子プロ-ブの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Chemical Biology using bioactive natural products as specific ligands: identification of molecular targets and regulation of bioactivity |
Project/Area Number |
26102710
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
永次 史 東北大学, 多元物質科学研究所, 教授 (90208025)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遺伝子 / 発現制御 / RNA高次構造 / 低分子プローブ / アルキル化反応 / 疎水空間 / 核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体分子を化学修飾する分子プロ-ブは生命現象の制御や解明に不可欠であり、その重要性が認識されている。既に蛋白質を化学修飾する低分子プロ-ブは種々検討されており、細胞内において選択的に標的蛋白をラベル化する分子プロ-ブも開発されている。しかし細胞内でDNAやRNAを配列選択的に化学修飾する方法論は現在のところほとんど報告されていない。近年、RNA研究の進展に伴い様々な機能性RNAの存在が明らかにされており、細胞内でこれらのRNAを選択的に化学修飾できる分子プロ-ブは、その機能解明のツールとして極めて有効であると考えられる。本研究では塩基欠失部位を持つオリゴヌクレオチドと反応性核酸を含む低分子プロ-ブを用いた、DNAあるいはRNAの1塩基に対し、ピンポイントの選択性で化学修飾する方法論の開発を目指した。 前年度までの検討において、独自に設計した水素結合形成により活性化される反応性塩基とDNAに対して結合親和性を持つ部分としてペンタアルギニンを導入したプローブを合成し、その反応性を検討した。その結果、中性条件下、24時間後、約60%の収率で塩基欠損部位の向かいのチミンに対して選択的に反応することがわかった。しかしその後の検討により、このプローブは1本鎖にも反応することがわかった。 そこで本年度は2本鎖DNAのAATT配列を持つマイナーグルーブに結合するヘキストを持つプローブ及びアクリジンを持つプローブを合成し、その反応性を検討した。その結果いずれのプローブも1本鎖には反応せず、2本鎖DNAの塩基欠損部位の向かいのチミンに対して選択的に反応することがわかった。さらに反応したDNAをテンプレートとしてDNAポリメラーゼによるプライマー伸長反応を検討したところ、いずれの場合にも反応点であるチミンのところで、伸長反応が阻害されることもわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、計画していた2つの分子プローブとして、ヘキストを持つプローブ及びアクリジンを持つプローブの合成に成功した。これらのプローブの反応性を検討したところ、選択性及び効率とも非常に高いブローブの開発に成功した。ヘキストを持つ反応性プローブについては、その反応性がヘキストの結合部位であるAATT配列と反応点である塩基欠損部位のチミンとの距離に依存することもわかった。この結果は、当初の設計どおりに、ヘキスト部分が2本鎖DNAに結合し、塩基欠損部位の向かいのチミンに対して反応性塩基2-AVPが水素結合形成することで反応が進行したことを示していると考えている。またこれらのプローブが反応した位置で、DNAの伸長反応が止まることもわかった。これらの結果は当初、予期していなかったことであり、これらのプローブを今後検討していくにあたり、非常に有用な性質であると考えている。さらに予備的ではあるが、反応性塩基側の構造についてもいくつか検討した。その結果、非常に高い反応性を持つプローブの開発、さらには反応後に機能性分子を導入可能なプローブの合成にも成功した。これらの研究の進展は当初予定していた計画よりも早いと考えられる。本研究で目標としていた、疎水空間の一つである塩基欠損部位での選択的アルキル化反応を誘導するプローブは開発できたものと考えている。今後は下記の点について検討する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までにDNAの疎水空間の一つである塩基欠損部位における選択的アルキル化反応するプローブ開発に成功した。本年度はこれらのプローブの機能化及び細胞内への適用について検討する。さらに新たな標的部位としてRNAの高次構造を設定し、その構造内で標的塩基に対して選択的なアルキル化能を持つ、反応性低分子の開発について検討する。反応性部位としては、昨年度までに検討してきた2-アミノ6-ビニルプリン(2-AVP)に加え、そのデアザ体、さらにはピリミジン誘導体に、RNA高次構造に結合することが知られているヘキスト誘導体を導入した反応性低分子誘導体を合成し、その反応性について検討を行う。さらに2-AVPの7-デアザ体は、7位に置換基を導入できるため、ここにアルキンを導入した低分子プローブも合成する。アルキンはクリックケミストリーを利用することで、後から蛍光などの機能分子の導入が可能となるため、高次構造を持つRNAの標識化するプローブとして展開可能であると考えている。さらにより高い反応性を持つ反応性塩基誘導体を持つ低分子プローブも合成する。合成したプローブの反応性を検討した後、これらの反応性部位と標的RNAに結合するリガンドを連結するリンカーの長さについても検討を行い、より効率的に反応する低分子プローブを開発する。高い反応性を持つ低分子プローブに関しては、プローブが反応した構造についても検討する。RNAの高次構造は様々な機能性RNAで重要な働きを持つことが示唆されており、これらの構造に対して選択的に化学反応を誘起するプローブはRNAの機能を制御する新しい方法論として展開できるものと考えている。
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Research Products
(42 results)