2014 Fiscal Year Annual Research Report
運動方向への有色ノイズによって起こるアクティブマターの群れ運動
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
26103505
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
永井 健 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (40518932)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アクティブマター / 非平衡相転移 / 集団運動 |
Outline of Annual Research Achievements |
微小管の集団運動に関して次のような実験を行った。孤立した微小管一本の運動に対する集団運動の依存性を明らかにするため、ダイニン密度、ダイニンの種類をパラメータとした集団運動の変化を追った。その結果これまでに報告されていた微小管の渦の格子以外に、渦状構造がランダムに揺らぐアクティブフォーム、一様なネマチック相などの集団運動が生じることが明らかになった。現在の実験系ではフローセルの壁が微小管の吸収壁となっているため、集団運動の定常状態を観察することはできない。このため、観察された集団運動が安定相であるかは不明である。この問題を解決するため、PLL-Pegによるガラス面の修飾を用いてセルの壁に対する微小管の吸着を防ぐことに成功した。 系の対称性のみを考慮した現象論的数理モデルについて次のような解析をした。まず、回転速度の持続時間と粒子密度を変数とした集団運動の相図を作成した。その結果、回転速度がしばらく維持されると、微小管に見られる渦の格子やアクティブフォームなどのこれまでに報告されていない相が生じることを明らかにした。また回転速度の履歴を考慮することにより、短距離のネマチック相互作用のみによりパケット状の運動方向が一方向に揃った相が生じることを発見した。さらにこの数理モデルの渦の格子相への転移に関する連続場記述を導出し、回転運動と短距離のネマチック相互作用による実効的な相互作用により渦の格子が生じることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた孤立した微小管の観察は実験装置の作成に手間取ったため、あまり進捗していない。その代わりに平成26年度は平成27年度に行う予定であった微小管の集団運動のダイニンの密度やダイニンの種類に対する依存性の解明や数理モデルの詳細な相図の作成を行い、前述のように多くの結果が得られた。孤立した微小管の観察についても、実験装置の作成はほぼ終了し、すぐにでも実行可能な状況であり平成27年度前半に計画したデータを得られる見通しである。そのため、当初の計画順序とは異なるものの、2年間の研究全体として見た時当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は微小管の密度を下げ、孤立した微小管の運動特性と2本の微小管間に働く相互作用を明らかにする。まず100マイクロメートル四方あたり1本まで微小管密度を下げ、他と相互作用しない一本の微小管の運動を解析する。回転速度の相関時間を観測するために巨大な撮影素子とxy自動ステージを組み合わせ、孤立した微小管の運動を長時間観察する。軌道のデータを平滑化して軌道の曲率を計算し、回転速度が維持される時間を求める。次に、200マイクロメートル四方あたり10本ほどに微小管密度を調整し、2本の微小管に働く相互作用を観察する。衝突するまでの2本の微小管の位置相関を測定し、周囲の水の流れなどによって生じる相対位置に応じた相互作用を描く。衝突時の相互作用に比べてこれらの相互作用は小さいものの、集団になった時に少なからず影響があると考えられる。次に微小管衝突時の運動方向変化を測定する。これから微小管の衝突角度と平行・反平行方向への整列頻度を解析し、衝突時のネマチック液晶状の相互作用の強さを測定する。 次に上記の実験で得られた結果と平成26年度に得た数理モデル中の群れ運動の相図と比較する。この時用いたモデルは現象論的なため、定量的一致は得られないと予想される。そこで相図形状の定性的な一致、相転移点のオーダーの一致に注目する。モデルと一致する領域では少々の擾乱があっても運動方向に関する相互作用と運動方向への有色ノイズのみによって群れ運動が決まり、アクティブマターの詳細によらない普遍性がある領域と言える。普遍性のある領域の大きさからゆらぎの相関時間の重要性を評価できる。
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Research Products
(12 results)