2014 Fiscal Year Annual Research Report
地震および破壊の統計における新しい定量的関係式
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
26103506
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
波多野 恭弘 東京大学, 地震研究所, 准教授 (20360414)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | グーテンベルク・リヒター則 / 大森則 |
Outline of Annual Research Achievements |
粉体系の準静的変形においては、定常状態においても応力とエネルギーが激しく揺らぐ。この揺らぎはエネルギー極小値を与える粒子配置の不連続的な変化に対応しているが、これを一回の「イベント」として定義する。その際の急激なエネルギー減少幅は一回のイベントで解放されるエネルギーである。この対数をとったものは地震におけるマグニチュードの類似量であるので、ここでもマグニチュードと呼ぶ。粉体系において、マグニチュードごとイベント頻度分布がグーテンベルク・リヒター則に従うことはよく知られている。 26年度においては、粉体系のシミュレーションを行い、Gutenberg-Richter則が成立するのがジャミング密度近傍においてのみであることを発見した。さらに、イベント開始直前の剪断応力の値によって規模別頻度分布をフィルタリングすると、統計パラメターの値が剪断応力の減少関数であることが明らかになった。これは、地震学における仮説を粉体モデルにおいて実証したものと位置付けられる。 この単純な粉体モデルにおいても、比較的大きな規模のイベントの後に「余震」的イベントが多数発生することがある。「本震」を適切に定義することによって「余震」を定義し、その発生頻度を本震からの経過時間の関数として表すと、それが地震と同様の大森則に従うことを発見した。大森則には時定数が一つ含まれるが、この時定数が本震発生前の剪断応力値の減少関数であることを発見した。また、その依存性は指数関数でよく記述されることを発見した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地震は超巨大スケールの破壊現象であり、そのダイナミクスは極めて複雑かつ多様である。しかし、 地震の「発生頻度」に話を限定すると、非常にシンプルで普遍的な統計法則が成立する。このように「スケールを越えた普遍的統計法則」の背後にあるロバストな物理・統計力学的構造を明らかにすること、微視的ダイナミクスと巨視的現象論をつなぐロジックと数理を抜き出すことが重要である。我々がここで注目したのは、「統計法則に含まれるパラメターの物理的意味」である。とくに、グーテンベルク・リヒター則と大森則に含まれる二つのパラメターが地震発生場の剪断応力と相関をもつという地震学における最近の仮説の検証を具体的な物理モデルを用いて行う。 そのためには、地震と類似の統計法則を示すようなシンプルなモデルをいかに設定し解析するかに研究の成否がかかっている。今年度においては粉体をゆっくり変形する際の粒子再配置イベントについて解析を行い、イベントの規模別発生頻度に関してグーテンベルク・リヒター則が成立し、余震に関して大森則が成立することを発見した。さらに、統計パラメターが地震発生場の剪断応力に依存することを定量的に確かめることができた。とくに、大森則に含まれる時定数に関しては、指数関数的な依存性を発見した。これは、定量的な関係式を示せたという点で極めて重要である。
|
Strategy for Future Research Activity |
粉体剪断系においては本来の目的を達成することができた。ただ、粉体はサブ断層スケールのいわば最小スケールで発生する地震であり、そこで起こっていることが必ずしも巨大スケールの地震でも成り立つかは自明ではない。したがって、巨大スケールでの破壊伝播現象をモデル化し、そこにおいてパラメタの応力依存性を検証することが必要となる。
|