2014 Fiscal Year Annual Research Report
ガラス化における揺らぎの相関構造の発現メカニズムとその輸送異常に果たす役割の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
26103507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
古川 亮 東京大学, 生産技術研究所, 助教 (20508139)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 過冷却液体 / ソフトマター / ガラス転移 / マイクロレオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
過冷却液体の輸送特性と空間相関・構造の関係性を理解する手段としてのマイクロレオロジー的アプローチについて分子動力学シミュレーションにより詳細に検討した:マイクロレオロジーは特にマクロなレオロジー測定では到達できない「 顕著な内部構造、内部自由度を反映した局所的な粘弾性測定」が可能であることが利点として挙げられる。そこでは、一般化されたストークス=アインシュタイン(SE)則の成立が暗黙裡に仮定される。しかし、この一般化されたSE則に現れる複素弾性率が真にバルクの局所測定を反映した物理量であるか否かは、本来、自明ではない。結論から言えば、過冷却液体に試験粒子を導入することにより、試験粒子の境界付近のダイナミクスは大きく変調する。そのため、試験粒子の運動はバルクの空間相関・構造より、むしろ境界付近のダイナミクス異常をより強く反映する。我々は系統的な数値実験的アプローチにより、以下の結果を見出した。 (i)単純液体では、試験粒子の運動は、通常のSE則によって、よく記述される。他方、過冷却液体では、拡散係数がSE則で予測される数値よりも格段に小さく、その値は粒子サイズに依存する。これは、試験粒子の周りに形成される「遅い層」に起因する。この効果は、高温の単純液体状態では観測されない。(ii)この試験粒子周辺のダイナミクスの変調は顕著な有限サイズ効果を引き起こす:高温の単純液体の場合には、重要な長さスケールがシステムサイズと粒子サイズの二つであることを反映して、拡散係数はそれらの比によってよくスケールされる。これは、通常のNavier-Stokes方程式の枠組みで記述される有限サイズ効果として、よく知られている。ところが、過冷却液体では試験粒子により導入される新たな長さスケール(=遅い層の厚さ)を反映して、このようなスケーリング関係は成立しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度を通じて継続的に取得した膨大なシミュレーションにより、ガラス物質の緩和メカニズムについて、これまで見いだされていなかった重要な知見を得ることができた。成果報告、研究発表についてスピード感を多少、スピード感を持って取り組むことを心がけたい。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの一連の研究では流体輸送そのものが有する時空階層性を明らかにしたが、この成果は従来の動的不均一性の研究と相補的であったと考えている。従来の4点相関関数法などの手法では、不均一性や空間相関と輸送異常との関係についての曖昧さが排除できなかったが、流体輸送の空間相関に直接的にアクセスすることで、これを回避できる。平成26年度を通じて得たシミュレーションデータの系統的な解析を行った結果、緩和メカニズムについて重要な知見を得ることができたので、27年度はこれらの結果に基づいた成果報告を予定している。
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