2014 Fiscal Year Annual Research Report
ゲージ・重力対応を用いた非平衡定常系の基本法則の探求
Publicly Offered Research
Project Area | Synergy of Fluctuation and Structure:Foundation of Universal Laws in Nonequilibrium Systems |
Project/Area Number |
26103517
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
中村 真 中央大学, 理工学部, 教授 (00360610)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | AdS/CFT対応 / 非平衡定常状態 / 有効温度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、非平衡定常系の有効温度について、AdS/CFT対応を用いて系統的に調査した。筆者が行ってきた従来の研究では、解析対象とする非平衡定常系を比較的単純なものに限定していたが、ここでは、より一般的な系を解析した。
具体的には以下の通りである。ここで扱う非平衡定常系の一つは、定常電流の流れる系である。従来の解析では、定常電流を担う荷電粒子として、正電荷を担う粒子と負電荷を担う粒子の双方が同数含まれる系、すなわち平均の電荷密度がゼロである系を解析していた。本年度の解析では、この電荷密度がゼロでない場合に解析を拡張した。また前年度までの解析では、荷電粒子の質量がゼロである特別な状況を扱っていたが、本年度の解析では荷電粒子の質量が一般の場合について広く解析を行った。 その結果、次のような結果が得られた。荷電粒子の電荷密度を増やすことで、非平衡定常系の有効温度はより低くなる傾向が得られた。さらに、同じ傾向は、荷電粒子の質量を増やすことでも得られた。荷電粒子の質量を増やすと、系で生じている正負電荷対の対生成は抑制され、さらに電荷密度を増やすことで電流に占める対生成由来の荷電粒子の寄与は相対的に低くなることから、ここで得られた解析結果は、対生成の抑制は有効温度を下げる働きがあるものと解釈される。さらに、質量無限大の極限をとった結果は、単独の荷電粒子を外力で牽引するランジュバン系で得られた有効温度と一致することも分かった。従って、これまでの一連の解析の整合性も、この意味において確認することができた。これらの研究成果は学術論文として発表した。
上記以外にも、非平衡定常状態における自由エネルギーの役割を果たす物理量の定義と定常状態熱力学、非平衡定常状態における揺らぎのスペクトル解析、量子異常がもたらす非平衡定常系の不安定性についての研究も行い、現在、いずれも論文出版の準備を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有効温度の系統的解析については順調に進展し、研究成果を学術論文として出版することが出来ている。また、 ・非平衡定常状態における自由エネルギーの役割を果たす物理量の定義と定常状態熱力学 ・非平衡定常状態における揺らぎのスペクトル解析 ・量子異常がもたらす非平衡定常系の不安定性 に関する研究についても、既に出版可能な結果を得ており、現在、論文としてまとめる作業に入っている。さらに、非平衡相転移に関する系統的研究の準備も進んでおり、これらを総合すると、研究は順調に進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現在、研究成果を論文としてまとめている内容のうち、特に ・非平衡定常状態における自由エネルギーの役割を果たす物理量の定義と定常状態熱力学 ・非平衡定常状態における揺らぎのスペクトル解析 に関してさらに研究を進める予定である。上記テーマは一定の研究成果が得られているものの、いずれも研究の発展の初期段階にあり、用いたモデルのパラメータを増やし、より一般的に解析を進めるなど、さらに研究を進展させる要素のある研究テーマである。 また、今後は非平衡相転移に関する系統的研究についても進めて行く。筆者がこれまで行った研究では、モデルのパラメータの数やパラメータの領域が限定されていた。これらをより一般的に拡張した上での解析を行い、知見を蓄積する。また本研究の主要な手法とするAdS/CFT対応以外でも、現象論的に非平衡相転移を記述するモデルを構成する試みを進めており、この方向での研究も相補的に推進していく。さらに、実験グループとの意見交換を既に開始しており、今後は本研究で得られる理論的な成果を実験的に検証される可能性も追求したい。
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Research Products
(10 results)