2014 Fiscal Year Annual Research Report
深部対流モデルによる系外惑星大気運動の多様性の数値的研究
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontiers of Extrasolar Planets: Exploring Terrestrial Planets |
Project/Area Number |
26103706
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹広 真一 京都大学, 数理解析研究所, 准教授 (30274426)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 木星大気 / 土星大気 / 赤道加速ジェット流 / 縞状構造 / 回転球殻熱対流 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成 26 年度では, 平成 24--25 年度において構築した回転球殻非弾性系ガス惑星大気モデルを用いて, 非同期回転ガス惑星の大気循環の多様性を調べる数値実験を遂行する予定であった. そのためにわれわれは, まず参照例となるべき研究として, 非同期回転ガス惑星の Heimpel and Aurnou (2007) の数値計算を再検討した. かれらは木星および土星で観察される赤道域の幅広な広い赤道加速ジェット流と中高緯度にて交互に流れの向きを変える縞状ジェット構造を「薄い回転球殻熱対流モデル」で世界最初に同時に再現したとされていた. しかしながら, かれらの計算設定は全球ではなく経度方向に 8 回対称性を仮定したものであり, さらに計算時間が十分とはいえなかった. そこでわれわれは, Heimpel and Aurnou (2007) と同じ計算設定および解像度を保ちつつ全球へと拡張し, さらに長時間積分を実行した. その結果, 時間積分の中途段階において, 木星・土星に見られるような赤道ジェットと中高緯度の縞状構造が同時に出現し, Heimel and Aurnou (2007) と整合的な結果が一見得られたようにみえた. しかしながら, さらに時間積分を進めると, 中高緯度が全体に西風加速され縞状構造が消滅していき, 最終的に南北中高緯度に幅広の帯状流がそれぞれ 1 本づつとなった. この結果から, Heimpel and Aurnou (2007) の解は過渡的なものであり, 木星および土星の表層流を再現するモデルとしてはふさわしくないものであることが明らかになった. 長時間積分で中高緯度の縞状構造が消滅したことは, 木星・土星の帯状流が惑星深部の対流運動により直接的に生成されてはいないことを示唆するのかもしれない.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パラメター実験のスタートとして想定していた先行研究の吟味に時間が費やされたため予定していた数値実験の遂行に遅れが出ている。パラメター実験は進捗が遅れているものの、これまで当該分野で標準的な数値実験と思われていた研究の欠陥を明らかにしたことは、とても意義深い成果を上げることができたと自負している。
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Strategy for Future Research Activity |
木星型惑星大気の表層構造が薄い球殻の「深いモデル」で再現できるという標準的先行研究の結果が間違っていたことが明らかになったために、「深いモデル」によるパラメター数値実験と並行して、惑星表層の横長な流体運動を記述する「浅いモデル」の枠組みを再検討することも必要となったと思われる。その枠組みにおいてもたとえば下部境界の深さを変化させるといったパラメター実験を行い、出現する流れの構造の多様性を追求することが必要である。
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Research Products
(6 results)