2014 Fiscal Year Annual Research Report
原始惑星系円盤の進化多様性と金属量の関連性の解明
Publicly Offered Research
Project Area | New Frontiers of Extrasolar Planets: Exploring Terrestrial Planets |
Project/Area Number |
26103708
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
高木 悠平 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 研究員 (80648973)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 星・惑星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
普遍的な星および惑星の形成過程を明らかにするためには、形成過程にある星の正確な温度、質量、年齢などの物理量を正確に決めることが重要である。前主系列星の観測はこれまで主に多波長の測光観測によって求められた光度や温度を基に議論されてきたが、測光観測から求められる前主系列星の光度には、星の距離、減光量、前主系列星に付随する原始惑星系円盤の熱的放射(ベーリング)が含まれるため、正確な議論を行うことが難しかった。 本研究では、高分散分光観測によって得られる前主系列星の大気吸収線の等価幅比を用いることで、測光観測で問題となっていた距離、減光量、ベーリングの不定性に依らずに前主系列星の表面重力を決定する方法を確立した。前主系列星は進化とともに収縮し密度が増加し、星表面での重力も徐々に増大するため、星の表面重力を求める事で年齢を導くことが可能である。 この手法を用いて、近傍の星形成領域であるおうし座分子雲に属する前主系列星10天体の年齢を決定した。その平均年齢はおおよそ200万年であり、前主系列星の年齢が大きくなるとともに原始惑星系円盤からの熱的放射が減少することが分かった。これにより、おうし座分子雲中の前主系列星の円盤散逸タイムスケールがおおよそ200万年であることが分かった(Takagi et al. 2014, PASJ, 66 88)。また、同じく近傍にあるへびつかい座分子雲の前主系列星に対し同様の観測を行った結果、へびつかい座分子雲ではおうし座分子雲の半分程度である100万年程度で円盤が散逸することが分かった。この結果は、星形成領域ごとに円盤の進化時間が異なることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標である普遍的な星・惑星形成過程の解明と金属量の原始惑星系円盤の散逸タイムスケールに対する依存性の調査に向けて、おうし座分子雲とへびつかい座分子雲の2領域における原始惑星系円盤の進化タイムスケールを明らかにすることができた。その結果、星形成領域ごとに原始惑星系円盤の散逸タイムスケールが異なることが判明した。これまでの原始惑星系円盤の進化タイムスケールの議論は、すべての星形成領域においてタイムスケールは等しいという仮定のもとで行われてきたが、本研究の結果によってその仮定を見直す必要があることが示唆された。また、星形成領域ごとに原始惑星系円盤の進化タイムスケールが異なる原因を明らかにする必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果として、星形成領域ごとに原始惑星系円盤の進化タイムスケールが異なることが明らかになった。次年度はこの原因を探るべく、前主系列星の金属量決定を行い、金属量と原始惑星系円盤の進化の相関を明らかにする。星の金属量は星の大気スペクトルから求めることが可能であるが、同時に表面重力にも依存しているため、これまでは正確に求めることが難しかった。しかし、本研究の手法によって表面重力を正確に求めることができるため、より正確な金属量決定が可能になる。これまでに観測したおうし座分子雲とへびつかい座分子雲の前主系列星の金属量を決定し、金属量と原始惑星系円盤の進化タイムスケールの相関を導く。
|
Research Products
(5 results)