2014 Fiscal Year Annual Research Report
柔らかいタンパク質・DNA分子認識のマルチスケール計算研究
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
26104517
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高田 彰二 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60304086)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 柔らかい / DNA / 分子認識 / マルチスケール / シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
2本鎖DNAは、その保持長が極めて長く、基本的には”硬い”高分子と考えられているが、時折みせる2本鎖DNAの”柔らかさ”(変性、曲がり、ねじれの3要素)は、ゲノムの格納、ゲノム複製、DNA修復など、高次の生命現象を支える重要な性質である。2本鎖DNAの“柔らかさ”は、DNA結合タンパク質によって誘導されるか、または認識される。2本鎖 1.新しい粗視化DNAモデルの実装と検証 de Pabloらの新しい粗視化DNAモデルを実装し、そのDNAモデルの物性を検証したあと、DNAとタンパク質との非特異的な相互作用を精査した。de Pabloらは、従来の粗視化DNAモデルを改良した第二世代とその派生型のモデルを最近発表した。これらは、従来モデルと比べて、主溝・副溝の大きさ、二本鎖DNAの柔らかさ、一本鎖DNAの柔らかさをより高精度に再現する。我々はまず、これらのモデルを我々のソフトウエアCafeMolに実装した。さらに、de Pabloらが論文で報告している物性を実際にもつことを再確認した。 2.新しい粗視化DNAモデルとタンパク質の相互作用解析 de PabloらのDNAモデルと我々のタンパク質モデルを融合するためには、DNA・タンパク質相互作用の精度良い記述が鍵となる。ここでの主たる課題は、de PabloらのDNA-DNAの静電相互作用では、カウンターイオン凝集の効果を考慮してリン酸に電荷-0.6eをおくのに対して、タンパク質ータンパク質ではイオン化されたアミノ酸同士は+1eあるいは-1eの電荷で相互作用する。そこで、DNA-タンパク質相互作用をどのように記述するかという点である。DNA-タンパク質の非特異的な相互作用の強さ(Kd)の実験データがある系について、Kdをよく再現するための電荷を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、年度内の早い時期に新しい粗視化DNAモデルを実装、検証することができた。また、我々が従来から開発してきた粗視化タンパク質モデルと合わせる際の相互作用についても調査研究の結果、だいたいの指針が固まった。従って、この新しいモデルを利用して、配列依存的なDNAの変形を研究するための基礎ができた上がった。すでに、DNAの曲がりを認識し、あるいは結合によってDNAを曲げることのできるHUタンパク質をモデリングし、HUとDNAの相互作用や動態について研究を始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した粗視化2本鎖DNAモデルを用いて、DNA結合タンパク質の結合によってDNAが曲がる、変性する、あるいはねじれる分子系の計算を実施する。具体的には、 大腸菌のゲノムへのクロマチン様タンパク質HUの結合とそれと共役するDNAの曲がりを計算する。HUは、特異配列を持たない特性を持つが、一方、曲がった構造を認識することが示唆されている。HUがDNAの柔らかさを認識し、さらには結合した部位のDNAを曲げる効果について、シミュレーションから詳細に研究する。 2b) DNA修復機械MutSが2本鎖DNAの曲がりを認識する過程を計算する。まず、Tainerらの最新の実験(Hura et al, PNAS 2013)と比較する。次に、あらかじめ特定の位置で折れ曲がった(キンクした)2本鎖DNAを用意し、その部分をMutSが認識できるかどうか調べる。さらに、途中にミスマッチがあって柔らかさに富んだ2本鎖DNAのミスマッチ部分をMutSがいかにして認識できるか、その仕組みを調べる。
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Research Products
(11 results)