2014 Fiscal Year Annual Research Report
生体巨大分子の混み合いが形成する制限された水和空間での蛋白質の構造転移とその制御
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
26104527
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
関谷 博 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90154658)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 混み合い効果 / 水和効果 / 閉じ込め効果 / タンパク質の折り畳み |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞中で生合成されたタンパク質は,正しい構造に折り畳まれることによって生体分子機械としての機能を獲得する.タンパク質の折り畳み機構を解明するために非常に多くの研究が行われてきたが,過去の研究によって得られた知見の多くは系中に共雑物が存在しない状況で行われた実験結果によって導かれたものである.しかしながら,実際にタンパク質が分子機械として機能を発揮する場所は,非常に多くの共存分子が密に詰まった空間である.本課題では,タンパク質を取り囲む環境因子に目を向け,特に「巨大分子の混み合い効果」,「水和効果」,「閉じ込め効果(サイズ効果)」に注目して研究を行った. 平成26年度は,温度応答性高分子として知られているポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIAPM) のランダムコイル-グロビュール転移に対する巨大分子の混み合いと塩添加の複合効果に関して研究を行った.PNIAPM水溶液にカオトロピック塩として知られるNaSCNおよび親水性非荷電ポリマーであるポリエチレングリコール (PEG) を同時に添加すると,それぞれを独立に添加したときと比較して,PNIPAMの相転移温度が大きく変化することを見出した.同様の振る舞いは,NaClO4においても観測された.これは,PEGの添加によって水溶液の誘電率が低下したため,PNIPAMに吸着したSCN-もしくはClO4-アニオン同士の静電反発が増大し,その結果,構造転移による排除体積利得(水分子の並進エントロピー利得)が減少したためであると考えられる.一方,コスモトロピック塩として知られるNaFやNaH2PO4などはPNIPAMに吸着しないため,上記のようなPEGとの顕著な複合効果は見られなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画どおり,平成26年度は,バルク溶液におけるPNIPAMのランダムコイル-グロビュール転移に関する共存分子の混み合いと塩添加効果を調査し,一定の成果を得た.また,平成27年度の研究を遂行するために必要なイオントラップおよびレーザー顕微分光装置も開発済みである.以上のことから,本研究課題は順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に得られたPNIPAMのランダムコイル-グロビュール転移に対する混み合い効果や水和効果に関する知見を深めるために,微小液滴が形成するミクロな空間サイズにおいて同様の実験を行う.また,実際の生体高分子が示す「巨大分子の混み合い効果」,「水和効果」,「閉じ込め効果(サイズ効果)」に関する知見を得るために,ミオグロビンやシトクロムcのようなヘムタンパク質にも研究を展開していく予定である.
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Research Products
(7 results)