2014 Fiscal Year Annual Research Report
光応答性分子結晶の構造変化による固体物性制御
Publicly Offered Research
Project Area | Science on Function of Soft Molecular Systems by Cooperation of Theory and Experiment |
Project/Area Number |
26104537
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
森本 正和 立教大学, 理学部, 准教授 (70447126)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超分子化学 / 分子性固体 / 誘電体物性 / フォトクロミズム / 水素結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
フォトクロミック分子の光異性化反応に伴う構造変化や結晶格子変形を用いて固体物性を可逆的に制御できる分子結晶を創出することを目指して、フォトクロミック分子結晶の合成ならびに光応答挙動の観測を行った。 可逆的な光異性化反応を示すジアリールエテン(光応答部位)と、プロトン移動機構により誘電応答を示し得るイミダゾールや3-ヒドロキシエノンなどの水素結合性置換基(物性発現部位)とを融合した水素結合性フォトクロミック分子結晶を新規に合成した。これらの結晶中において、イミダゾールや3-ヒドロキシエノンのN-H…N型、O-H…O型分子間水素結合が形成され、一部の結晶については分子間プロトン移動を示し得る水素結合分子一次元鎖構造が構築されていることが示唆された。顕微分光スペクトル測定を行うことで、紫外光と可視光の照射により単結晶が可逆的なフォトクロミズムを示すことを確認した。フォトクロミック分子の光異性化反応に伴う構造変化をin situ X線結晶構造解析により追跡したところ、紫外光照射後の結晶においては、光生成した閉環異性体の構造がディスオーダーとして観測されるとともに、水素結合分子一次元鎖に平行な結晶軸が伸長していた。可視光を照射すると結晶構造はもとに戻った。このような光誘起結晶格子変形は、フォトクロミック分子の光異性化反応に伴う幾何構造の変化により起こることが示唆された。 光異性化反応による固体物性制御の新たな可能性として、フォトクロミック分子結晶の蛍光スイッチング現象を見出した。ベンゾチオフェンS,S-ジオキシドを有するフォトクロミック分子結晶は、紫外光照射による異性化反応に伴い蛍光強度が増大するturn-on型蛍光スイッチング機能を示した。また、新規蛍光スイッチ分子の創成へ向けて、ベンゾホスホールを有するフォトクロミック分子を合成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質合成については問題なく進行し、種々の水素結合性フォトクロミック分子結晶を合成することができた。分子間プロトン移動を示し得る水素結合分子一次元鎖構造が形成され、また水素結合ネットワークを有する分子結晶においても可逆的なフォトクロミック反応が進行し、フォトクロミック分子の光異性化反応に伴う幾何構造の変化により結晶格子が変形することを明らかにした。このように、分子間水素結合と光応答機能を有する分子結晶を合成したことは、本研究課題が目指す固体物性制御へ向けての重要な結果である。また、蛍光スイッチング機能という新たな展開も見えてきた。よって、本研究課題はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き物質合成を行いながら、合成した水素結合性フォトクロミック分子結晶の誘電物性を精査するとともに、フォトクロミック分子の光異性化に伴う分子構造変化や結晶格子変形が誘電物性に与える影響を検討する。分子結晶について電気物性と顕微分光スペクトル測定を行い、光反応の進行と物性変化挙動の相関を明らかにし、光応答性を評価する。実験と並行して、量子化学計算により分子間水素結合におけるプロトン移動ポテンシャルの解析を行い、結晶格子が変形する際の変化をシミュレートすることにより、結晶格子変形と物性変化の相関を明らかにする。蛍光スイッチング現象については、ベンゾチオフェンやベンゾホスホール骨格を有するフォトクロミック分子誘導体を合成し、結晶中での構造変化と蛍光スイッチングの相関を検討する。
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Research Products
(10 results)
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[Journal Article] Control of the single-molecule magnet behavior of lanthanide-diarylethene photochromic assemblies by irradiation with light2014
Author(s)
Dawid Pinkowicz, Min Ren, Li-Min Zheng, Saki Sato, Miki Hasegawa, Masakazu Morimoto, Masahiro Irie, Brian K. Breedlove, Goulven Cosquer, Keiichi Katoh, Masahiro Yamashita
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Journal Title
Chemistry - A European Journal
Volume: 20
Pages: 12502-12513
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] Photochromic reaction of diarylethenes having phenol moiety as an aryl ring2014
Author(s)
Tadatsugu Yamaguchi, Yusuke Kamihashi, Toru Ozeki, Ayaka Uyama, Jun-ichiro Kitai, Megumi Kasuno, Kimio Sumaru, Yoshiro Kimura, Satoshi Yokojima, Shinichiro Nakamura, Masakazu Morimoto, Kingo Uchida
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Journal Title
Bulletin of the Chemical Society of Japan
Volume: 87
Pages: 528-538
DOI
Peer Reviewed
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