2014 Fiscal Year Annual Research Report
ミューオン異常磁気能率のアノマリーを説明する新物理の現象論的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Particles Physics opening up the Tera-scale horizon using LHC |
Project/Area Number |
26104705
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
戸部 和弘 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20451510)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ミュー粒子異常磁気能率 / 新物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミュー粒子異常磁気能率(muon g-2)の実験値と標準模型の予言値の食い違いを新物理によって説明しようとするとどのような標準模型を超える物理の可能性があるのかを研究した。 まず、JHEP1403, 105 (2014) (Harigaya, Igari, Nojiri, Takeuchi, Tobe)で指摘した(ミューオン数ータウオン数)をゲージ化した新U(1)対称性を持つ理論を考えた。我々が指摘したmuon g-2を説明できるパラメータ領域がニュートリノ-トライデント生成実験から制限を受けているという指摘(Phys. Rev. Lett. 113, 091801 (2014) W. Altmannshofer et al.)があったので、その制限を考察し、今まで解析で無視されてきたゲージボソンの運動項混合の効果が重要になる可能性を研究した。このモデルは、高エネルギーでこの運動項混合がゼロだとしても、低エネルギーで有限補正が生ずるので、この影響を調べ、新ゲージボソン質量のさらなる制限を明らかにした。 また、我々の論文Phys. Rev. D78, 055018 (2012)(Kanemistu, Tobe)で研究したように、新物理がmuon g-2に寄与を与えるとき、大きなカイラリティー反転を持つような模型は比較的容易にmuon g-2のアノマリーを説明できる。そのような模型の一例として、2 Higgs doublet modelでμーτフレーバーの破れがある模型を考えた。(arXiv:1502.07824, Omura, Senaha, Tobe. JHEPに掲載決定) μーτフレーバの破れはCMS実験でヒッグス粒子がμτに崩壊している現象を幾つか見つけていることから、それも同時に説明する領域があるかを解析した。そのような領域は存在し、将来のB-factory実験でのτ to μγの探索でこの模型が検証できる可能性を指摘した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミュー粒子異常磁気能率のアノマリーを説明できる標準模型を超えた理論を幾つか考察してきたが、その一つとして、標準模型の簡単な拡張である 2 Higgs doublet modelでμーτフレーバーの破れを持つモデルがあることを発見した。(arXiv:1502.07824, Omura, Senaha, Tobe. JHEPに掲載決定) μーτフレーバーの破れはCMS実験で、ヒッグス粒子がミュー粒子とタウ粒子に崩壊した現象が観測されていることも説明できるため、面白い可能性である。つまり、muon g-2アノマリーとヒッグスのμτ崩壊の2つの標準模型では説明できない現象が結びついているというのは、非常に興味深い。このCMS実験のμーτフレーバーの破れの現象は、まだATLAS実験では追認されていないので、今後の実験結果は重要である。さらにこのような模型が本当だとしたら何を予言するか、を明らかにすることは重要である。我々が明らかにした特に重要な予言としては、τ to μγの崩壊現象がある。これは将来のB-factoryで観測可能であるかもしれないことを示唆しているので、LHC実験とあわせてこの模型にとっては重要な実験となることであろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
まずは2014年度に見つけたtwo Higgs doublet modelの可能性のさらなる詳細な解析を行う予定である。この模型の重い付加的なヒッグス粒子は、まだ知られていない(フレーバーの破れを含む)湯川相互作用を持っているので、その影響/制限を明らかにすることは重要である。それによって、今年度から再開されるLHC実験で、どのように探索/制限できるか、を明らかにして行きたい。さらにこのフレーバーの破れを含む湯川相互作用は、B物理にも影響を及ぼす可能性もあることから、その影響も明らかにしたい。B物理でも幾つか標準模型では説明できないアノマリーが指摘されていることから、この模型で、さらに説明可能なのかを研究する。 また、two Higgs doublet model以外の模型でも、 今までに報告されている幾つかの標準模型では説明できないアノマリーと、muon g-2アノマリーを同時に説明できる可能性はないのかをさらに調べることで、標準模型を超える理論の理論的な探索をして行きたい。
|