2014 Fiscal Year Annual Research Report
原子核乾板検出器を用いた短基線ニュートリノ振動実験
Publicly Offered Research
Project Area | Unification and Development of the Neutrino Science Frontier |
Project/Area Number |
26105516
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小川 了 東邦大学, 理学部, 教授 (10256761)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ニュートリノ振動 / 原子核乾板 / ステライルニュートリノ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、J-PARC内ニュートリノ実験施設において、原子核乾板検出器を用いた短基線ニュートリノ実験を行うことにより、LSND実験の結果から示唆されるニュートリノ振動現象を高い感度で検証を行うことを目的とする。ニュートリノ実験施設では、2014年12月からおよそ2ヶ月のニュートリノ照射試験が可能となった。2014年度上半期は、ニュートリノ実験施設の現地調査および検出器の設計、設置場所の検討を行った。J-PARC T60実験として承認を得て、2014年10月よりテスト実験を開始した。研究協力者が中心となり、名古屋大学における新型高銀含有原子核乾板乳剤の製造および原子核乾板の製作を行った。およそ4kgの乳剤の製造を行い、製作した乾板を用いてニュートリノ実験施設SS階において、一部を広範囲に設置することにより環境放射線の評価と、鉄を標的物質とした質量3kgのエマルション積層チェンバー(ECC)を構成し、INGRID検出器の前に設置した。ECC中の飛跡に時間情報を付加するために、3層から成るシフターを神戸大学の協力により設置した。一方で、一部を分子科学研究所において電子線照射を行い、時間経過後に現像を行うことで原子核乾板の感度の経時変化を行った。2015年1月に新たに2kgのECCを設置し4月1日まで反ニュートリノビームの照射を行った。ニュートリノイベントジェネレータGENIEと検出器シミュレータGEANT4を用いたシミュレーション研究を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目標となるニュートリノ振動現象に感度を得るためには、およそ1トンの標的質量を必要とする。本研究では、エマルション積層チェンバー(ECC)で標的を構成することにより、新しい感度でのGeVからsubGeV領域でのニュートリノ反応の観測を目指している。この実験で使用する原子核乾板は、新型高銀含有の新型原子核乾板で、名古屋大学において自主製作を行っている。原子核乾板の感度評価を行い、100ミクロンあたり50以上の従来よりも高い銀粒子密度を得た。感度の経時変化特性を調べ、室温(23度)では、30日経過後に銀粒子密度が50を切ってしまうのに対し、冷蔵(10度)では、60を上回っていることが確認された。ノイズとなるフォグ密度は、室温、冷蔵何れの場合も1平方mmあたり10を切っており良好であることが分かった。INGRID上における実験ホール内の環境放射線も大きく影響のあるものは観測されなかった。2014年12月に取り出したECCモジュールは、東邦大学において現像を行い64枚の原子核乾板プレートを現像できることを確認した。新たに原子核乾板44層から成るECCを構成し2015年1月より照射実験を行った。4月1日取り出し時点のpotは、13.8×10の19乗であり、34イベントのニュートリノ反応事象の蓄積が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年1月より照射をしたECCを取り出し、東邦大学で現像後、名古屋大学において超高速自動顕微鏡ステージ(HTS)により、ニュートリノ反応探索のスキャンニングを行う。データは、東邦大学に持ち帰り、広角自動顕微鏡ステージ(FTS)による追加スキャンニングも行いながら、高効率なニュートリノ反応検出技術の確立を目指す。J-PARC内ニュートリノ実験施設においては、2015年5月よりニュートリノビームが予定されており、これに向けて6kgのECC標的の製作を行っている。この標的は、水標的と鉄標的部からなり標的物質によるニュートリノ反応が比較可能である。感度の経時変化調査の結果を踏まえ、冷蔵装置をニュートリノ実験施設SS階に設置し、標的は冷蔵装置内に納めた。さらに、J-PARCでは、2015年11月よりニュートリノビームを予定している。これに向けて、新たに原子核乳剤の製造、および原子核乾板の製造を名古屋大学において行う予定である。名古屋大学においては、従来の3倍の原子核乳剤製造装置が稼働する。ニュートリノ反応数にして1000イベントを目標とし、電子ニュートリノ反応事象の検出を目指す。シミュレーション研究も進めることで、検出器および検出法の最適化を行う。
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