2014 Fiscal Year Annual Research Report
要素抽出と再構築によるペプチドミメティック触媒の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105710
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
工藤 一秋 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (80251669)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 有機分子触媒 / ペプチド / ミミック |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで用いてきたターン+ヘリックス型のペプチド触媒では,N末端側のβターン構造Pro-D-Pro-Aib-Trp-Trpが反応中間体の一方の面を覆うことで,エナンチオ選択的反応が達成されている。このことから,まずこのターン部分を構成するD-Pro-Aibのミミックについて検討を行った。ターンミミックには多くの報告があるが,ここではまず,分子構造自体がターン要素をもっていて,TrpとN末端のProが強制的に近接した位置に来ると考えられ,かつできるだけ単純な構造をもつものを用いることとし,調製あるいは入手の容易さから,2-アミノシクロヘキサンカルボン酸の各立体異性体,ならびにキラル要素をもたないアントラニル酸を選んだ。これらのβ-アミノ酸をターンミミックとしてペプチド触媒のターン構造部分であるD-Pro-Aibと置き換えたものを調製し,それを水中でのフリーデルクラフツ型反応に適用した。しかしながら,いずれも,オリジナルのペプチド触媒と比較して著しく低い触媒能を示し,単純な折り返し構造を持つだけではミミックとはならないことが分かった。 そこで次に,今後の分子設計の基礎とすべく,知られているジペプチド型のミミック分子を用いることとした。βターンにはいくつかのサブタイプがあり,D-Pro-Aibはそのうちのtype II’に該当する。そこで,type II’β-ターンミミックである化合物を用いて検討を行ったところ,転化率88%,80%eeとオリジナルのペプチド触媒に近い触媒能を示した。このように,単にβターンというだけでなく,type II’の構造をもつ必要もあることがわかった。なお,ターンミミックを用いたときにヘリックス部位が不要になる可能性も検討したが,ヘリックスのないものでは転化率13%でラセミ体が得られ,この場合でもなおヘリックスが重要な役目をしていることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は1年以内にβターンのみでなくαヘリックスのミミックについても検討を進める予定でいたが,βターンミミックの合成に手間取ってしまい,αヘリックスミミックについては未着手に終わってしまったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は,まずへリックスの役割の解明に向けて,当初計画していたようなヘリックスミミックを合成して,そのユニットをもつペプチドミメティック触媒の機能を詳細に調べる。へリックスの役割が分かった後,その立体的あるいは電子的な要素だけを抽出したより簡単な分子への置き換えを行う。さらに,βターン,αヘリックス双方のミミックをつなげた有機分子触媒の開発へも展開を図る。
|