2014 Fiscal Year Annual Research Report
カチオン-π相互作用に基づくテンプレート型光増感触媒の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105716
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山田 眞二 お茶の水女子大学, 大学院人間文化創成科学研究科, 教授 (30183122)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カチオン―π相互作用 / Norrish-Yang反応 / アンモニウム塩 / ジアステレオ選択性 / 有機光反応 / 立体選択的合成 / 有機触媒 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、アセトフェノン類の2位に種々の置換基を有する基質を用いて、Norrish-Yang反応を行い、アンモニウム塩の添加によるcis/trans選択性に及ぼす影響を明らかにした。2位にEtOOCCH2O-基を有する基質では、Bu4NClを添加することで、著しい反応速度の加速効果が見られた。基質とテトラブチルアンモニウムイオンとのコンプレックスの分子軌道計算を行った結果、基質の二つのカルボニル基がアンモニウムイオンとの相互作用により接近したsyn配座を有する比率が3倍に増加することが明らかになった。このコンホメーションは励起状態からの水素引き抜き反応に有利であるため、反応の加速効果が見られたものと考えられる。 また、2位にEtO-基を有する基質では、目的生成物であるジヒドロベンゾフラノールの他に、副生成物としてジヒドロイソベンゾフラノールが生成するが、今回新たに合成したアセトフェノン骨格を結合したアンモニウム塩を触媒として用いることで、副生成物が抑制されることが明らかになった。この効果の詳細は明らかではないが、アセトフェノン部位が増感剤として作用すると同時に、アンモニウム部位が相互作用によりコンホメーションを制御することで選択性を高め、副生成物を抑制したものと考えられる。 今年度は、アクリルアニリド類の6π電子環化反応ににおけるアンモニウム塩の効果についても検討した。アクリルアニリド類の6π電子環化反応では、ジヒドロベンゾキノロンが生成するが、この場合もcis/trans異性体の混合物が得られる。この時、アンモニウム塩を添加することで高いtrans選択性が得られることが明らかになった。この反応機構として、アンモニウム塩を添加することで光閉環後の分子間水素移動を抑制し、分子内1,5-水素移動が優先したためであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
テトラブチルアンモニウム塩が、ベンジルオキシアセトフェノン類のNorrish-Yang反応を加速することを見出し、汎用の試薬である塩に触媒作用があることを見出した点は、本研究の基盤を確立できたものと評価できる。さらに本触媒を用いて、[6π]電子環化反応によるジヒドロベンゾキノロンのジアステレオ選択的合成も達成し、概ね順調に研究が進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに明らかにしたテトラブチルアンモニウム塩のジアステレオ選択的な触媒効果に加え、エナンチオ選択性を達成すべく、光学活性なアンモニウム触媒の合成を行い、Norrish-Yang反応および[6π]電子環化反応に有効な不斉触媒の開発を目指す予定である。
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