2014 Fiscal Year Annual Research Report
キラルブレンステッド酸触媒を用いる不斉ホスホロアミダイト法の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105720
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
岡 夏央 岐阜大学, 工学部, 准教授 (50401229)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ホスホロアミダイト / リン原子修飾核酸 / 核酸医薬 / PS-DNA / 亜リン酸トリエステル / ビナフチルリン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、DNAの化学合成法として知られるホスホロアミダイト法にキラルブレンステッド酸を有機分子触媒として応用することで、PS-DNAの不斉合成法の開発を試みた。まず、種々のビナフチルリン酸を活性化剤とするPS-DNA 2量体の合成を試みたところ、最大で98:2の立体選択性でほぼ定量的にPS-DNA 2量体が得られることを見出した。加えて、様々な分子骨格を有するビナフチルリン酸塩を用いた反応の検討を行うことで、触媒の分子構造と反応の収率、立体選択性に関する新しい知見を得ることができた。更に、反応の進行に従ってホスホロアミダイトから脱離し、酸触媒を不活性化するジイソプロピルアミンをイソシアネートで捕捉することにより、触媒的に反応が進行し、中程度から良好な収率で目的物が得られることを見出した。 一方、亜リン酸トリエステルは不斉配位子や有機分子触媒、生理活性リン酸誘導体の合成中間体などとしても有用であるが、軸不斉や不斉炭素ベースの化合物が中心であり、不斉リン原子をもつ亜リン酸トリエステルの効率的な不斉合成法は確立されていない。そこで、本研究では、前述の手法を核酸以外の基質へと応用することによって、不斉リン原子を持つ亜リン酸トリエステルの不斉合成法の開発を試みた。立体的な嵩高さが異なる2種類のアルコールから成るホスホロアミダイトに対し、3,3′位に置換基を有するビナフチルリン酸やその塩を活性化剤としてアルコールを反応させ、得られた亜リン酸トリエステルの収率と立体化学的純度によって活性化剤の性能を評価した。ホスホロアミダイト、アルコール、活性化剤の分子構造に加え、溶媒などの反応条件を種々検討した結果、目的とする亜リン酸トリエステルを88:12-91:9の立体選択性で得る手法の開発に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の検討によって、まず、PS-DNA 2量体を最大で98:2の立体選択性でほぼ定量的に得る反応条件を見出している。更に、様々な分子骨格を有するビナフチルリン酸塩を用いた反応の検討を行うことで、触媒の分子構造と反応の収率、立体選択性に関する新しい知見を得ることができた。これらの知見は、触媒反応の更なる効率化に不可欠である。また、核酸塩基部位の保護基の求核性が、反応の収率、立体選択性に大きく影響を与えるファクターであることを新たに見出した。更に、反応の活性中間体をNMRでとらえることによって、その2つの立体異性体間の交換反応が比較的遅いことを発見した。後述の通り、これらの知見を基に反応の収率、立体選択性の更なる向上が期待できる。加えて、本反応の核酸以外の基質への応用についても検討し、単純な骨格の亜リン酸トリエステルを88:12-91:9の立体選択性で得る手法の開発に成功した。これらの成果は、当初の研究計画に記した目標をほぼ達成していることから、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
① 触媒の分子設計による収率、立体選択性の向上 平成26年度の検討によって、本反応に用いるブレンステッド酸触媒の分子構造と反応の収率、立体選択性に関する多くのデータが得られた。これらのデータによると、ブレンステッド酸の対アニオンの求核性が、置換基の電子求引性や触媒の立体障害等によって低くなるにつれ、反応の収率、立体選択性が低下していることが分かった。加えて、本反応の活性中間体をNMRによって解析した結果、活性中間体の両立体異性体間の交換速度は比較的遅く、このことが、動的速度論分割による高立体選択性の発現を妨げていることが考えられる。これも対アニオンの求核性が低いことに起因すると考えられる。そこで、今年度は、より求核性の高い対アニオンを有するブレンステッド酸触媒をデザインし、反応の収率、立体選択性の向上を目指す。 ② 保護基の検討による収率、立体選択性の向上 平成26年度の検討の結果、本反応の収率、立体選択性が核酸塩基の保護基に大きく影響を受けることを見出した。本反応を詳細に解析した結果、原料であるホスホロアミダイトのリン原子に求核攻撃しやすい保護基を用いると収率、立体選択性が大きく低下していることが分かった。そこで、核酸塩基の保護基として、ホスホロアミダイトのリン原子に求核攻撃しないものを用いることで、本反応の収率、立体選択性の向上を目指す。 ③ 亜リン酸トリエステルの触媒的不斉合成法の開発 上述の①、②の検討によって得られた反応条件を応用し、核酸以外の亜リン酸トリエステル、及びその類縁体であるホスフィナイト、第2級ホスフィンオキシドの触媒的不斉合成法へと発展させる。
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Research Products
(16 results)