2014 Fiscal Year Annual Research Report
多機能性アゾリウム塩の創製と実践的不斉合成への応用
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105721
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
鳴海 哲夫 静岡大学, 工学研究科, 准教授 (50547867)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / アゾリウム塩 / 不斉反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
含窒素複素環式カルベンは触媒前駆体であるトリアゾリウム塩やイミダゾリウム塩に塩基を作用させることで生成し、近年光学活性なアゾリウム塩を用いた不斉反応への展開も精力的に行われている。中でも、アミノインダノールを不斉源とする四環性トリアゾリウム塩を用いることで、立体化学を高度に制御した環化付加反応やカスケード型反応、光学分割など広く研究されている。一方で、光学活性なイミダゾリウム塩は同様な不斉環境を有する四環性イミダゾリウム塩などが報告されているが、反応性、選択性ともに大きな課題を残しており、高い触媒活性とエナンチオ制御能を兼ね備えた高次機能性イミダゾリウム塩の創製が望まれている。そこで、今回我々はNHC触媒の反応様式を拡充する新たな触媒機能の発見や協同効果の開拓を目指し、これまでNHC触媒反応に関与しなかった対アニオンを機能化した複合型アゾリウム塩を設計し、合成研究に着手した。効果的な不斉反応場が期待できる不斉リン酸を銀塩へと誘導し、対アニオンに塩化物イオンを有する種々のアゾリウム塩とのアニオン交換反応によりビナフトール骨格の3,3’位に種々の置換基を有する複合型アゾリウム塩を合成した (72%~94%)。IPrと3,3’位にフェニル基を有する不斉リン酸アニオンからなる複合型アゾリウム塩のX線結晶構造解析の結果、イミダゾリウム環2位水素とリン酸アニオンは水素結合を形成していることが明らかになった (C-H~O-P水素結合距離:1.95 A。また、得られた触媒前駆体群をホモエノラート等価体による不斉ラクトン化反応に応用したところ、IMesと3,3’位に4-ニトロフェニル基を有するキラルリン酸アニオンからなる複合型アゾリウム塩にn-BuLiを作用させ系中で生成したNHC/ルイス酸協同触媒を用いることで、不斉収率は15% eeまで向上した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IMesと3,3’位に4-ニトロフェニル基を有するキラルリン酸アニオンからなる複合型アゾリウム塩にn-BuLiを作用させ系中で生成したNHC/ルイス酸協同触媒を用いることで、不斉収率は15% eeまで向上した。これらの結果から、当初計画した対アニオンの機能化によるNHC触媒の高度化研究は大きく進展した。また、これまでに単一触媒による共役型Breslow中間体のエナンチオ選択的なホモエノラート付加反応の報告例は数例に限られているため、こちらも新たなトリアゾリウム塩を設計し、現在合成研究を実施している。具体的には、共役型Breslow中間体において生じる一時的な電気双極子相互作用により不斉空間を構築するトリアゾリウム塩触媒を合成し、予備的検討においてすでに23% eeまで不斉収率が向上している。以上のことから、本研究はおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)複合型アゾリウム塩の創製と不斉触媒反応への応用 IMesと3,3’位に4-ニトロフェニル基を有するキラルリン酸アニオンからなる複合型アゾリウム塩にn-BuLiを作用させ系中で生成したNHC/ルイス酸協同触媒を用いることで、不斉収率は15% eeまで向上したものの、反応性に課題を残している。これはIMesとルイス酸との錯体形成に起因するものと考えられるため、それぞれの触媒が錯体を形成せずに機能する新たなアゾリウム塩またはルイス酸の創製が求められる。そこで、これまでの構造活性相関研究で得られた知見に基づき、新たな複合型アゾリウム塩を合成し、触媒活性、エナンチオ選択性について精査する。また、不斉収率23%eeが得られている共役型Breslow中間体において生じる一時的な電気双極子相互作用により不斉空間を構築するトリアゾリウム塩触媒についても構造最適化を行い、有用物質合成を推進しうる有機分子触媒の創出を目指す。
2)触媒的不斉ハロ環化反応に有用な高次機能性アゾリウム塩の創製 ハロ環化反応は、複素環化合物の合成や光学分割などに広く利用される重要な分子変換反応であり、近年有機分子触媒を用いた触媒的不斉反応が相次いで見出されている。そこで、アゾリウム塩の新たな可能性を見出すために、双性イオン型アゾリウム触媒を創製に挑戦する。触媒合成は、報告者が所有する光学活性なアゾリウム塩からカルベンを生成させ、S8を作用させることで容易に調製が可能である。単一触媒の検討に加え、添加剤に起因するルイス塩基性やブレンステッド酸性など触媒/基質/ハロゲン化剤との相互作用についても検討し、反応性の向上や協同効果の発見を目指す。
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