2014 Fiscal Year Annual Research Report
単体ヨウ素による超原子価ヨウ素試剤の活性化を鍵とする新奇触媒システムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105735
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
南方 聖司 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273599)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヨウ素 / ハロアミド塩 / ジアジリジン / ジアミノ化 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではハロアミド塩の酸化能力と求核性および求電子性の特性を活用し、従来の方法では合成が困難であるジアジリジンが縮環したビシクロ化合物の合成法の開発を検討した。まず、基質である環状の第2級アミンとして単純なピロリジンを用い、ハロアミド塩の種類、触媒および反応条件を種々精査したところ、ハロアミド塩としてブロマミンT、触媒としてトリフルオロ酢酸(10 mol%)を用いたところ、ピロリジンが縮環したジアジリジンが91%の単離収率で得られることを見出した。本反応の一般性を確かめるために、種々の環状第2級アミンを用いて検討した。ピペリジンの場合、収率の低下がみられたが、4位にヘテロ原子を有する六員環のアミンからは、良好な収率でビシクロ体を合成することができた。また、七員環や八員環のアミンからも目的のジアジリジンを形成させることができた。さらに、本研究ではオレフィンから直接的にビシナルアミンを合成する方法論の開拓を検討した。ヨウ素触媒存在下、クロラミンNsを窒素源とした場合、オレフィンを直接的にジアミノ化できることが判った。例えば、4-フェニル-1-ブテンに対して10 mol%のヨウ素触媒存在下、2当量のクロラミンNsをアセトニトリル中40度で12時間作用させたところ、ジアミン誘導体を単離収率72%で得ることができた。本ジアミノ化反応は、様々なオレフィンに対して適用可能であった。例えば、脂肪族の末端オレフィン、アリルアルコール、アリルアミド、さらにはエステルやハロゲノ基をもつオレフィンに対して、効率的にジアミノ化が進行した。また、芳香族オレフィンや、環状オレフィンからもジアミノ体を合成することができた
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、予定していた日本の重要な資源であるヨウ素を有機合成反応に積極的に活用することにより、様々な有機合成反応を見出すことができた。ヨウ素化合物は毒性が極めて低く、近年の重要課題である「環境調和性に優れた反応開発」に適した反応剤であり、これまで、申請者らは、ヨウ素試剤(特に、単体ヨウ素や1価ヨウ素試剤)のユニークな反応性に着目し、反応開発を行ってきた。本研究課題では、これまでの研究を基盤とし、ヨウ素反応剤の新たな反応性の開拓と、それを利用した新奇反応開発に取り組むことで、既存反応の更なる省プロセス・高効率化や、これまで困難であった反応を実現することができた。特に、超原子価ヨウ素試剤と単体ヨウ素を組み合わせて利用する全く新しい反応系を駆使し、実用性かつ環境調和性に優れた「未来型分子変換反応」の一つを明らかにした。このような観点から、ある程度は今年度の目標はおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度にやり残した超原子価ヨウ素試剤と単体ヨウ素の組み合わせによる新しい反応系を開拓すると共に、その不斉合成への展開を図る。また、ヘテロ原子―ヨウ素結合を有する反応活性種を酸化的に系内で発生させ、新たな触媒的合成反応を開拓する。具体的には、入手容易な酸化剤である次亜塩素酸を用いて単純なアミドを系内でハロアミド塩へと導き、これをヨウ素触媒で活性化することによって、窒素―ヨウ素結合をもった活性種を鍵としたオレフィン類のアジリジン化やビシナルジアミド化反応を開発する。ここで、ハロニウムを発生させるときにオレフィンの面選択が制御できれば不斉反応に展開できる。また、アミドを2分子使用すればビシナルジアミド化反応となるが、1分子のアミドと別の求核種を使用すれば、異なる原子をオレフィンに付加させることができる。このような方法はこれまで類がなく、自由自在にオレフィンを官能化できる手法として非常に期待できる。
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