2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子触媒を用いるアルカンの高効率酸化
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105746
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
尾野村 治 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (60304961)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 有機分子触媒 / 酸化 / アルカン / シクロアルカン / アジピン酸 / 脂肪酸 / 金属フリー / バイオディーゼル |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、油脂を加メタノール分解して得られる長鎖脂肪酸メチルエステルのバイオディーゼルとしての需要が世界規模で高まっている。その結果、油脂やグリセリンの需給バランスが崩れており、この問題の解決は国家レベルの重要な課題となっている。一方、ポリエチレンの再利用や再資源化も重要な課題である。ポリエチレンは直鎖、分岐鎖状に分類されるが、いずれも極めて長鎖のアルカンである。これを適当な長さで酸化的に切断できれば長鎖脂肪酸となるので、廃ポリエチレンからバイオディーゼル原料を生み出せる。本課題では、グリセリン問題、廃ポリエチレン問題という2つの国家的課題を同時に解決できる反応への応用を見据え、その基礎となる「有機分子触媒を用いるアルカンの高効率酸化」の開発を目的とする。ごく最近、有機分子触媒により金属を全く用いずシクロヘキサンをアジピン酸に常温・常圧で定量的に酸化できる反応を見出した。有機分子触媒の使用量は0.2当量であり、低減が求められている。ここではこの反応を精査するとともに、常温、常圧で、余分な廃棄物を出さず、不活性なアルカンを脂肪酸に定量的に酸化できる反応を開発するために、(1)C-H結合を活性化できる有機分子触媒(前駆体)の精査、(2)硝酸の使用量を低減できる反応条件の精査、(3)TFAの使用量低減を行った。その結果、以下の成果を挙げることができた。 (1)シクロヘキサンのアジピン酸への酸化に於いては、TFA中、0.15当量でも使用可能な触媒を見出した。 (2)n-オクタンのカプロン酸への酸化に於いては、TFAよりもトリクロロ酢酸が優れていることを見出した。 (3)アジピン酸合成は1M、カプロン酸合成は2Mで実施可能となり、単位体積当たりの生産性が向上した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
金属を用いず常温常圧で、有機分子触媒によりシクロヘキサンを活性化し,高効率にアジピン酸に酸化できる反応の開発に成功した。n-オクタンをカプロン酸に変換できることも明らかにした。このような反応は全く知られておらず、従来法とは異なる優れた特性を有している。 以上から、「おおむね順調に進展している」と自己評価できる
|
Strategy for Future Research Activity |
アジピン酸の合成に於いては、実用化の観点から、現状、N-ヒドロキシイミドを0.2当量使用することがネックとなる。そこで、使用量の低減と基質適用範囲拡大ができるように、この構造を最適化する。また、n-オクタンよりも長鎖アルカンへの適用可能性を見極める。
|