2014 Fiscal Year Annual Research Report
有機分子触媒を用いた創薬への合成的アプローチ
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105754
|
Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
鈴木 由美子 上智大学, 理工学部, 准教授 (20295546)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 有機化学 / 合成化学 / 有機分子触媒 / 天然物合成 / ヘテロ環化学 / 創薬科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
含窒素複素環式カルベン (N-heterocyclic carbene, NHC) は求核性を持ち、アルデヒドのカルボニル炭素に付加して、エナミン構造を持つBreslow中間体を生成する。Breslow中間体はNHCを触媒とするベンゾイン縮合やStetter反応の反応過程で生成し、アシルアニオン等価体として振舞う。求核的アロイル(アシル)化反応もまた、NHCを触媒としBreslow中間体を経て進行する反応であり、脱離基をもつ芳香環などに、求核的に一段階で芳香族アルデヒド由来のアロイル基を導入する。この反応の基質拡大を目指した反応解析および合成への利用を検討した。 ヒト卵巣癌細胞A2780に対して増殖阻害活性を持つ天然物TermicalcicolanoneAおよび B の全合成研究を行った。4環系骨格を持つ中間体の合成に成功した。 含窒素ヘテロ環化合物の合成法開発の一環として位置選択的なキノキサリン合成を行った。 NHC触媒反応の基質範囲拡大および創薬ライブラリーへの新規誘導体の供給を目的とし、ハロゲンを脱離基としたキナゾリン環5~8位への求核的アロイル化反応を検討した。NHC 触媒反応により、5~8位にアロイル基が導入された新規化合物が得られた。 Breslow中間体の反応性について、密度汎関数理論を用いて理論的反応解析を実行した。すべての計算はB3LYP/6-31G*レベルで行い、プログラムはGaussian09を用いた。また、同レベルで構造最適化を行い、Natural Bond Orbital解析を実行した。酸素原子の孤立電子対軌道の軌道占有数(Occupancy)とは相関がないものの、C-C結合のOccupancyはBreslow中間体の反応性とよく相関した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的の天然物Termicalcicolanone A および B の基本骨格であるピラノキサントンの構築まで達成できた。Termicalcicolanone B の合成は残り2段階の反応で達成できると考えられる。 NHC触媒反応によりイミドイルクロリドとアルデヒドとから生成するイミノケトンを中間体として用い、4-置換オルトフェニレンジアミンとの縮合反応を行うと、位置選択的に6位あるいは7位に置換が導入されたキノキサリンが合成できることが分かった。 ハロゲンを脱離基としたキナゾリン環5~8位への求核的アロイル化反応では、5~8位にアロイル基が導入された新規化合物を合成できた。特に、7位フルオロ基の置換反応は良好に進行した。 Breslow中間体の反応性について、密度汎関数理論を用いて理論的反応解析を実行し、触媒サイクルにおける律速段階がBreslow中間体と基質との反応であることを確認することができた。Natural Bond Orbital解析を実行し、C-C結合のOccupancyはBreslow中間体の反応性とよく相関することを見出した。しかし、反応種のみに対するNBO解析だけでは、それらの反応性の違いをうまく説明することはできない場合もあったため、「律速」となる反応の繊維状態について詳細に解析した。活性化ギブス自由エネルギーの大小と反応進行の有無が相関することが分かった。以上のように、有機分子触媒開発のための理論計算は順調に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)抗がん活性物質termicalcicolanone AおよびBの合成研究:termicalcicolanoe Aに関しては、より合成の効率を上げるため、用いる保護基の検討を行う。termicalcicolanoe Bに関しては、Claisen転位反応、脱ベンジル化により全合成が達成できる。各合成ステップの条件等見直しし、総収率の向上を目指す。 2)抗MDRSA活性物質citreamicin δの合成研究:HNC触媒反応にて合成したベンゾフェノン中間体からのキサントン骨格(EFG環)を構築する。ABC環に対応する中間体の合成として、有機分子触媒を用いた立体選択的アキサゾリジノン環形成反応を検討する。 3)イミダゾール、インドールの合成研究:NHC触媒反応で得られるイミノケトンのイミン部のみを還元してアミンとし、イミダゾール、インドールへの環化反応を試みる。 4)前年の理論解析で得られた知見をもとに、触媒分子を設計する。設計した分子について理論解析を行い、反応の進行に有利な値を与えたものを合成し、触媒能を検討する。
|