2014 Fiscal Year Annual Research Report
強酸性炭素酸を鍵構造とする新しい有機分子触媒の設計と利用
Publicly Offered Research
Project Area | Advanced Molecular Transformations by Organocatalysts |
Project/Area Number |
26105755
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
矢内 光 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (10408685)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 有機化学 / 炭素酸 / 双性イオン / ブレンステッド酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は,強酸性炭素酸の合成手法を開拓すると共に,合成した化合物の触媒作用を評価している。本年度得られた成果を次に示す。 [1] 強酸性炭素酸を用いた新しい合成反応 我々の炭素酸触媒を用いたMukaiyamaアルドール反応では,求電子種のみが強く活性化され,求核種の活性化は事実上ないと考えられる。そこで,反応系内に共存する極安定カルボアニオン(炭素酸の共役塩基)の際立って低い求核性を活用した新しい合成反応を着想した。検討の結果,炭素酸存在下にクマリンに対してケテンシリルアセタールを作用させ,次いでクロモンを加えると,逐次的なMukaiyama-Michael反応が進行することを見いだした。 [2] 極安定カルボアニオン構造を備えた酸性アンモニウムの触媒作用 炭素酸よりも温和な酸でありながら触媒作用を示す双性イオンについてもユニークな利用法を見いだした。すなわち,このイオン性化合物は酸触媒として作用しながらも,アセタールを損なうこと無しにカルボニル基を化学選択的に活性化した。また,適切な基質の設計から類例の乏しいアセタール選択的なMukaiyamaアルドール反応を開発した。 [3] ピリジニウム型双性イオンの動的構造変化と利用法 2-フルオロピリジニウム型双性イオンは,結晶中では双性イオン形として存在するが,ひとたび溶液とすると,即座に解離して2-フルオロピリジンおよびTf2C=CH2との平衡混合物となる。温度可変NMRによる詳細な動的構造の結果,この平衡反応はミリ秒オーダーの極めて速い化学プロセスであることを見いだした。また,幾つかの求核種との反応を行い,新たな炭素酸合成試薬としての有用性を示すことができた。さらに特筆すべきことに,この双性イオンは,分子構造中に酸性官能基を持たないにもかかわらず,触媒作用を示すことを見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
強酸性炭素酸および双性イオンに関する研究は,当初の想定を超える進捗があり,順調である。一方で,構造的に異なる炭素酸構造をもつ触媒の研究については,鋭意進めているところだが,有望な有機触媒を見いだすには至っていない。従って,総合的に判断すれば,研究は「おおむね順調に進展している」ものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
硫酸に匹敵する強酸性炭素酸の合成や,より酸性度の大きな炭素酸の合成については,一定の目処がついており,更なる検討を通じて,その利用法を深く探求していく予定である。一方で,達成度の項に示したとおり,構造的に異なる炭素酸の触媒作用については際立った成果が得られておらず,様々な炭素酸の合成と触媒作用の評価をスピードアップさせる必要がある。
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