2014 Fiscal Year Annual Research Report
マルチチャネルコラーゲンゲルを用いた巨大再生組織の高速構築システムの開発
Publicly Offered Research
Project Area | Hyper Bio Assembler for 3D Celluler Innovation |
Project/Area Number |
26106703
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古澤 和也 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (00510017)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 組織工学 / 巨大再生組織 / 複雑な階層構造 / コラーゲンゲル / 血管構築 / 三次元培養 / バイオアセンブラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、複雑な階層構造を持つ巨大再生組織の高速構築システムの開発を目的としています。平成26年度では以下の研究成果が得られました。 項目1.ミニ再生組織の構築方法の確立 本研究の目的を達成するために、多管構造を持つ粒子状のコラーゲンゲル(MCCGビーズ)を用いました。MCCGビーズの多管構造の表面に血管内皮細胞を播種することで、生体模倣的な血管構造をMCCGビーズ内部に構築することができました。このことにより、酸素や栄養を組織内部まで輸送するための経路をMCCGに構築することができました。また、MCCGビーズのゲル基質部分に肝臓がん由来の細胞を埋め込み、三次元的に培養する方法を確立するもできました。さらに、MCCGを用いて構築した再生組織の構造を制御することにも成功しております。 項目2.巨大再生組織の構築方法の確立 項目1の方法で構築したミニ再生肝がん組織を、厚さ2mm、直8 mmのディスク状MCCGに埋め込むことで、ディスク状の再生組織を構築することに成功しました。さらに、ディスク状再生組織を厚み方向に積層することで直径8mm、厚さ6mmの巨大再生組織を構築することにも成功しました。この方法の利点は、ミニ再生組織自体の構造、ミニ再生組織のディスク状再生組織内での配列、ディスク状MCCG自体の多管構造、およびディスク状再生組織の積層の方法や順番などを制御することで、巨大再生組織の構造をマイクロメートルからセンチメートルまでの広い大きさの範囲で制御することができることです。このことにより、巨大再生組織の階層構造がその機能に与える影響を系統的に調査することが可能になりました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究計画では、ミニ再生組織の構築方法を確立すること(研究項目1)と、巨大再生組織の構築方法を確立すること(研究項目2)を達成目標としておりました。 研究項目1では、MCCGビーズの多管構造表面に血管構造を構築する方法を確立しただけでなく、MCCGビーズのゲル基質中で細胞を三次元的に培養する方法を確立することにも成功しました。また、MCCGの多管構造を制御することで、再生組織の構造を制御する方法を確立することもできました。特に、MCCGを用いた細胞の三次元培養方法を確立することができたことにより、研究計画当初に予定していた方法よりも生体模倣的なミニ再生組織を構築するが可能となりました。以上のように項目1については当初計画以上の成果を達成することができたといえます。 研究項目2では、ミニ再生組織を集積することで厚さ6mm直径8mmの巨大再生組織を構築することに成功しました。しかしながら、いくつかの解決すべき課題が残されています。一つは、再生組織の階層構造と機能の相関についてまだ十分な調査を行えていないことで、もう一つは、再生組織内部の細胞の密度が生体内の臓器や組織と比べて低いことです。この二つの課題については平成27年度も継続して研究を遂行する必要があります。そのため、項目2についてはやや研究の進展が遅れている点があるといえます。 総合すると、本研究計画はおおむね順調に進展しているといえます。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度では、引き続き機能的な巨大再生組織の構築方法を確立することを目標とした研究を遂行します。また、これまでに確立したミニ再生組織や巨大再生組織の構築方法を、本学術領域の得意とするマイクロロボティクスや微小流路技術と組み合わせることで、複雑な階層構造を持つ巨大再生組織を自動的かつ高速に構築するシステムを実現します。具体的な推進方策を以下に示します。 項目1:機能的な巨大再生組織の構築方法を確立します 平成26年度の研究成果により、MCCGを用いた巨大再生組織の構築方法と、巨大再生組織の構造制御方法については確立することができました。平成27年度は様々な階層構造を持つ巨大再生肝組織を構築し、それぞれのアルブミンの産生能力やアンモニアの代謝能力を評価することで、再生組織の階層構造と機能の相関を明らかにします。このことにより、最も機能的な巨大再生肝組織を得る方法を確立します。 項目2:巨大再生組織の構築方法の自動化と高速化 MCCGは非常に簡単な方法で調製することができます。例えば、本研究で用いるMCCGビーズはコラーゲン水溶液をリン酸緩衝液中に滴下するだけで調製することができます。そのため、MCCGの調製方法は、マイクロロボティクスや微小流路技術との親和性が非常に高いといえます。そこで、本新学術領域との連携研究により、微小流路を用いたMCCGおよびミニ再生組織の構築方法の自動化を実現します。また、ミニ再生組織を集積し巨大再生組織を構築するプロセスをロボティクスなどの技術を用いることで自動化することにも挑戦します。また、構築した三次元細胞システムの機能評価に関連して、MCCG内部に構築した管腔構造のバリア機能の評価システムの開発や、MCCGを用いて構築した再生組織の三次元構造の観察などを目標とした連携研究を本新学術領域の他のグループと遂行する予定です。
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