2014 Fiscal Year Annual Research Report
血管構造の高速モールディングによるヒトiPS細胞を用いた肝組織構築
Publicly Offered Research
Project Area | Hyper Bio Assembler for 3D Celluler Innovation |
Project/Area Number |
26106712
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
福田 淳二 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80431675)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生医療 / 肝組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
ゲル内に高密度に細胞を導入し、三次元的な厚みのある組織を作製する場合、その作製プロセス自体を高速化しなければ、ゲル内に溶存している酸素が枯渇し細胞に大きな障害を及ぼす。単純な物質収支計算で、15分程度で酸素枯渇が生じることが概算される。そこで、2液を混合すると素早くゲル化するハイドロゲルを作製する。そこで、本研究では、生体適合性材料であるゼラチンとカルボキシメチルセルロース(CMC)を原料として数秒でゲル化するものを作製した。 血管様構造の高速モールディングに、電気化学的な細胞脱離技術を利用する方法を確立した。すなわち、オリゴペプチドを介して金ニードル(500 um)表面に接着させた血管内皮細胞を、ゲル内で電気化学的に脱離・転写させることで、内表面を血管内皮細胞に覆われた微小血管様構造を作製できることを示した。この転写した内皮細胞は、送液培養中にゲル内に遊走して管腔構造を自発的に作り、互いの微小血管様構造を接続した。 以上、本研究で作製したゲルとこの細胞転写により、全体で10分以内に血管様構造を高速モールディングする技術を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目の到達点は、素早くゲル化するin situゲル化バイオマテリアルの設計であった。実際に、細胞が存在する環境下で秒単位でゲル化するものを創製できたことから、計画書記載通りの結果が得られたと評価した。 また、さらにこのゲルを、電気化学細胞脱離を用いた血管構造の作製技術に応用し、送液可能な血管様構造の作製とそこからさらに微小な血管構造を伸長させることに成功している。 これらのことから、1年目の到達目標は達成されており、順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞から、肝前駆細胞を誘導し、さらにアルブミン分泌細胞まで成熟化する方法は、連携研究者がすでに確立している。しかし、この肝前駆細胞は、トリプシンなどで回収することが困難であり、また将来的に大量に調製するためには、通常の培養系では広い培養面積が必要となる。そこで、細胞非付着性の微小なウェル構造を複数備えたスフェロイド培養器をヒトiPS細胞から肝前駆細胞の誘導に用いる。この培養器では、ウェル構造 を持つ培養底面はシリコーンゴム製であり、培養底面から積極的に酸素を供給可能であり、大量の細胞を調製することが可能と考えられる。 ヒトiPS由来肝前駆細胞、ヒト間葉系幹細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞を共培養することで、血管網を有する機能的な肝組織構造が誘導されることを連携研究者が報告している。一方、送液可能な血管様構造の作製において、ハイドロゲル中にヒト肝癌細胞Hep G2、ヒト間葉系幹細胞、ヒト臍帯静脈内皮細胞を導入することで、血管様構造を接続するようにハイドロゲル内で血管内皮細胞のネットワークが形成されること、Hep G2細胞から培地中に分泌されるアルブミン量が培養経過とともに著しく増加することを確認している。 そこで、上記にて得たiPS由来肝前駆細胞をHep G2細胞の代わりに、同様にハイドロゲルへ導入し、機能的な肝組織が誘導されることを示す。特に、成熟肝マーカーや薬物代謝系酵素の発現、培地中へのアルブミン分泌や尿素合成を基準として、肝臓としての機能を評価する。 最後に、ヌードマウスを用いて小動物実験を行う。ここでは、上記で作製した培養肝組織の移植により、救命率や血液生化学値などに改善効果が見られることを示す。また、移植組織を摘出し、肝小葉構造の形成や胆汁の蓄積なども評価する。
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