2014 Fiscal Year Annual Research Report
原子層物質のスピン物性
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
26107505
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
野村 健太郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (00455776)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 物性理論 / 原子層 / スピントロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はグラフェンを中心とする2次元電子系へのスピン注入の理論的研究に着手した。グラフェンなどの原子層物質は強磁性体を直接的に接合できるので、従来型の2次元電子系に比べスピン注入デバイスとしての機能を有する事が期待できる。そこで我々は強磁性体がマイクロ波によって強磁性共鳴状態にある場合に2次元電子系に注入されるスピン流を計算を行った。特に線形分散を持つグラフェンではフェルミ準位によらず常にスピン流が注入されるという利点がある事を明らかにした。 トポロジカル絶縁体の表面もまた強磁性体を接合できる2次元電子系の一つである。強磁性体の磁化の方向がトポロジカル絶縁体の表面伝導にどのように影響を与えるかを、不純物効果を中心に解析した。強磁性体の磁化が面内方向を向いている場合と、面直方向を向いている場合で、乱れに対する堅牢性を比較したところ、面内磁化に対する磁気伝導度が堅牢である事がわかった。この理由として、面内磁化は表面のディラック電子に対し、有効ベクトルポテンシャルとして働く一方で、面直磁化は質量ギャップを与えることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
グラフェン上のスピン注入の研究はおおむね順調に進んでいる。グラフェンへのスピン流の計算にはサーキット理論を用いて行った。当該年度でスピン軌道相互作用が無視でき、かつ不純物散乱を無視した極限でのスピン流の計算はほぼすべて終える事が出来た。これは系がバリスティック領域にある場合に適応可能である。一方、トポロジカル絶縁体表面の磁気伝導現象に関しては転送行列法を用いて、伝導度を数値的に計算している。こちらも予定していた計算のほとんどが終了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は系がスピン軌道相互作用を含む場合に拡張する。シンプルであるが現実的でもある系として、MoS2やWSe2[4]などの価電子帯によるスピン流を調べる。これらの系の価電子帯のもつスピン軌道相互作用は特殊で、スピンのz成分だけは保存される。したがってz成分のスピン流は保存則を満たし、理論的な取り扱いに向いている。断熱近似を用いた磁化ダイナミクスをこの系に取り込む際に、有効磁気モーメントとしてスピン軌道相互作用を取り扱う。スピン軌道相互作用によりスピン偏極はバレー偏極と直接関係し、これによるスピン流を検証する。
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