2014 Fiscal Year Annual Research Report
単層/多層グラフェンにおける超伝導近接効果
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
26107508
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
神田 晶申 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (30281637)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ナノ材料 / グラフェン / 超伝導近接効果 / アンドレーエフ反射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、超伝導体(S)/グラフェン(G)界面で起こる『鏡面アンドレーエフ反射』を実験で観測することを目的としている。これまでこの現象が観測されなかった原因として、我々は、他では指摘されていない、『仕事関数差に起因する電極(超伝導体)からグラフェンへのキャリア注入とそれに伴うS/G界面近傍におけるキャリア密度のピン止め』を考えている。そこで、このキャリア注入現象の解明とその軽減・除去を初年度の目的とした。今年度の成果は以下の通りである。 1) 単一グラフェン上に形成したチャネル長の異なる多数の電界効果トランジスタ構造の電気伝導率のゲート電圧依存を比較することにより、「電極直下のグラフェン部分では、キャリア密度は完全には固定されないが、電極から十分離れたグラフェン部分に対してディラック点が大幅に移動する」ことを明らかにした。 2) 電極金属からグラフェンへのキャリア注入を軽減するためには、界面層として多層グラフェンを挟み込んだ構造を形成することが最適であると考えた。当初、化学気相成長法を応用した方法で多層グラフェンをグラフェン上に直接成長することを試みたが、成長時にグラフェンがダメージを受けることがわかった。これに代わる方法として、エッチングで整形した多層グラフェンを単層グラフェン上に転写する方法を開発した。 3) 単一グラフェン上に、さまざまな電極配置をもつ素子を作製し、電気伝導を比較した。その結果、当初想定したとおり、界面層として多層グラフェンを挟み込んだ素子では、電極からのキャリア注入の影響が完全に除去されることを示した。また、アモルファスカーボンを挿入した場合と比較して、多層グラフェンを挿入した場合にはコンタクト抵抗の増加が大幅に抑制されることを見いだした。したがって、本手法は鏡面アンドレーエフ反射の観測に有効であると期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究の第一の目的である、「電極金属からグラフェンへのキャリア注入の解明とその除去」については完全に達成されたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) 初年度に得られた成果を基にして、グラフェン/多層グラフェン/超伝導体接合を作製し、その低温電気伝導のゲート電圧依存性から、鏡面アンドレーエフ反射の有無を判断する。 2) グラフェン内の電子の平均自由行程を伸ばすために、素子全体をhBNで挟み込んだ構造を作製する。 3) 超伝導体としては、層状物質であるNbS2やNbSe2を用い、素子全体を転写法(van der Waals assembly)法によって形成する。
|