2014 Fiscal Year Annual Research Report
磁気光学測定によるグラフェンの超強磁場物性の開拓
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
26107512
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 大輔 東京大学, 物性研究所, 助教 (70613628)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2016-03-31
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Keywords | ランダウ準位構造 / 電子相関 / グラフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェンの超強磁場下における磁気光学測定(サイクロトロン共鳴実験)を行い、ランダウ準位構造を調べた。今年度は特に、CVD成長した単層グラフェンの基板やフェルミエネルギー(キャリア濃度)の違いにより、ランダウ準位構造がどのように変化するかという観点に着目して系統的な研究を行った。 測定試料は産業技術総合研究所(現所属:富士通研究所)の佐藤信太郎博士のグループに提供していただいた。CVD成長時の温度条件を変化させることによって、キャリア濃度の異なる単層グラフェン試料を作製し、さらに2種類の異なる基板上にグラフェン試料を転写した。 一巻きコイル法において発生させた100テスラを超える超強磁場環境下で、赤外領域の透過光強度を測定したところ、サイクロトロン共鳴に由来する吸収ピークが観測された。実験により得られたランダウ準位構造を試料ごとに比較した結果から、キャリア濃度の違いにより試料のフェルミ速度が変化していることが明らかになった。この現象は、キャリア濃度が少ないグラフェン試料ほど電子スクリーニングの効果が小さくなり、電子相関が強くなった結果として解釈できることが明らかになった。また、基板の誘電率の違いによってはフェルミ速度に顕著な違いは見られなかった。これまでの研究ではグラフェンのキャリア速度を変化させる要因として電子相関の変化、外部環境(基板の誘電率)、グラフェンに内在する歪みなどの要素が提唱されているが、本年度に実施された研究によって、CVDグラフェンにおいてキャリア速度を変化させる主要な要因が電子相関の効果であることが明らかになった。 これらの結果を国内学会(4件)および国際学会(3件)において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度の研究目標は、これまでに蓄積した磁気光学測定系を活用して、100テスラを超える超強磁場環境下での、グラフェンのランダウ準位構造に関する系統的な実験を行うことであった。この目標は十分に達成されたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究目標は、キャリア濃度を外部制御しながら磁気光学測定を行い、より詳細なキャリア濃度とランダウ準位構造の関係を明らかにすることである。このため、電圧バイアスを試料にかけながら超強磁場環境下での光透過測定ができるように測定系を改良して、実験を継続する。また、26年度中に得られた結果を投稿論文にまとめる予定である。
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[Presentation] SiC上グラフェンの超強磁場サイクロトロン測定2014
Author(s)
中村大輔, 斎藤宏晃, 沼田拓也, 日比野浩樹, 嶽山正二郎
Organizer
大阪大学先端強磁場科研究センター 強磁場科学研究会 「強磁場が切り拓く物質科学のフロンテイア」
Place of Presentation
大阪大学豊中キャンパス(大阪府豊中市)
Year and Date
2014-12-04 – 2014-12-05
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