2014 Fiscal Year Annual Research Report
低次元系における電子格子相互作用ダイナミクスの実験的解明
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
26107517
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
片山 郁文 横浜国立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80432532)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | グラフェン / カーボンナノチューブ / コヒーレントフォノン / ダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
コヒーレントフォノン分光法を用いてカーボンナノチューブやグラフェンなどの原子層物質の電子格子相互作用のダイナミクスを明らかにする研究を行った。その結果、コヒーレントフォノン分光法を用いてこれらの物質のフォノンを測定することに成功した。以下では、これらのそれぞれについて報告する。また、領域内の共同研究を開始し、最初の信号を得ることができた。 まずカーボンナノチューブの実験では、波長分解のコヒーレントフォノン分光を行い、コヒーレントフォノンの信号が検出波長によって大きく変化することを明らかにした。この際に強度が最も大きくなる波長は、電子状態の共鳴である励起子共鳴位置よりも低エネルギー側にシフトすることを初めて見出した。これはラマン過程の共鳴がフォノンエネルギー分だけシフトすることを初めて明らかにしたものである。また、イオン液体中にカーボンナノチューブ薄膜を浸し、電圧を印加することによって、フェルミ面を大きく変調できることを示した。これによって、フォノンの周波数や強度が変わるなど興味深い結果が得られている。 また、グラフェンの実験では、領域内の共同研究によって単結晶のグラフェンを提供していただき、コヒーレントフォノン測定を行った。その結果、単結晶グラフェンで初めてコヒーレントフォノンの測定に成功した。今後は、バイアス印加などを通してグラフェンのフォノンがどのように変化するかを明らかにしていきたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カーボンナノチューブにおけるコヒーレントフォノンの測定結果に関しては、論文にまとめることができた。また、そのほかにも、ビスマス薄膜など低次元系の電子格子相互作用に関する論文を準備中である。また、領域内の共同研究として、グラフェンのコヒーレントフォノン測定に成功し、端緒を開くことができた。これらの結果は、当初の研究目的に沿ったものであり、おおむね順調に進展していると考えることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、コヒーレントフォノン分光を用いて、共鳴効果による信号のピークがフォノンの周波数分だけシフトした位置に現れることを初めて示した。このことは、波長分解コヒーレントフォノンの有用性を示す重要な結果である。今後はこの研究をさらに発展させ、グラフェンなどの原子層物質の電子格子相互作用に関する研究を進め、共鳴効果などを通した新しい物理現象の探索を行いたいと考えている。特にバイアスを印加する実験を行う配置を考察し、本予算の期間中にグラフェンにおける電子格子相互作用を変調する実験を行いたい。また、顕微の分光計を立ち上げ、今後明らかにしていきたい。
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Research Products
(15 results)