2014 Fiscal Year Annual Research Report
酸化グラフェンの欠陥を有機分子で修復する
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
26107528
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
仁科 勇太 岡山大学, その他部局等, 准教授 (50585940)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 酸化グラフェン |
Outline of Annual Research Achievements |
酸化グラフェンは黒鉛を酸化・剥離して得られる2次元炭素ナノシートであり,還元により,sp2構造が回復することが知られている。そのため,酸化グラフェンをグラフェン前駆体として用いる検討が進められてきたが,実際は,完全なグラフェン構造に修復することが極めて困難であるということがわかってきた。その一方,酸化グラフェンに含まれる酸素官能基は,有機物や金属との複合化に適しており,複合材料としての用途開拓が盛んに行われている。 酸化グラフェンの官能基をエステル化やアミド化したという報告は複数あるが,十分な根拠が示されていないことが多い。洗浄を繰り返すことで,エステル化により付与されたアルキル基が次第に減少していくことを確認している。そのため,従来エステル化やアミド化によって得られたと主張されている複合体は,物理吸着やイオン吸着によって生じたものではないかと我々は考えている。特に,一般的なエステル化・アミド化剤である酸クロリドをカルボキシ基から発生させるために用いる塩化チオニルは,酸化グラフェンの還元剤でもあり,不適切であることがわかっている。 そこで我々は,酸化グラフェンに適したエステル化法を検討した。その結果,p-トルエンスルホン酸または硫酸を加えることで,酸化グラフェンの還元を抑制しつつエステル化できるという可能性を見いだした。この方法で得られた生成物は繰り返し洗浄しても,エステル化により付与された官能基が消滅しないことを確認した。また,酸化グラフェンのヒドロキシ基とカルボキシ基のどちらがエステル化に適しているか確認するため,ドデカノールまたはオクタン酸を用いて同条件で反応を行った。その結果,ドデカノールを用いた際にアルキル鎖が確認された。つまり,酸化グラフェンのカルボキシ基の方がエステル化されやすいことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
複数の共同研究につながり,当初の計画を超えた研究を行うことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
ポルフィリンやアントラセンにGOと結合可能な官能基をもたせてエステル化し,エッジの修飾や欠陥の穴埋めを行う。 申請者は炭化水素のハロゲン化触媒の開発も精力的に行っている。さらに,クロスカップリング反応に関しても十分な技術と経験がある。本年は,GOのOH基またはsp2ドメインを臭素化する触媒反応を開発する。この臭素化GOに対してクロスカップリング反応を行い,芳香族基を導入する。 得られた修飾GOは,還元処理,エステル結合の脱炭酸,熱処理による共役系の回復と炭素-炭素結合の形成を経て,完全に近いグラフェンへと変換する。還元処理の方法は生成するグラフェンの物性に大きく影響を与える。化学還元剤は元素ドープされたグラフェンを与える(例えば,ヒドラジンではNドープ)。一方,光還元ではヘテロ元素によるドーピングの心配がほとんどない。本研究においては,光の波長と強度を変えて光還元の条件を詳細に研究したい。これまでに,反応の波長依存性(作用スペクトル)の調査や,フラッシュ光照射によるμ秒光還元を検討している。
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Research Products
(3 results)