2014 Fiscal Year Annual Research Report
室温・大気中グラフェンナノリボン合成とトランジスタ応用
Publicly Offered Research
Project Area | Science of Atomic Layer Systems |
Project/Area Number |
26107531
|
Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
野内 亮 大阪府立大学, 21世紀科学研究機構, 講師 (70452406)
|
Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2016-03-31
|
Keywords | グラフェン / 光酸化 / ナノリボン / 酸素吸着 / 電界効果トランジスタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グラフェンナノリボンを室温・大気中にて合成可能な新規手法の開発と、得られたナノリボンのトランジスタ応用を目指すものである。本手法は、研究代表者がこれまでに見出した新規現象「ゲート制御型端選択的グラフェン光酸化」を用いる。この現象は、動作中(即ちゲート電圧・ドレイン電圧を印加中)のグラフェン電界効果トランジスタに対し紫外光照射を行うと、グラフェンの端から中央部へと酸化が進行していくというものである。酸化グラフェンは絶縁体であるため、酸化の進行を全酸化の直前で停止させれば、グラフェンナノリボンを残すことができると期待される。 これまでの予備的研究により、光酸化の進行が電極接合部において遅いことを確認している。従って、電極接合部の影響を正しく理解することが望まれる。今年度、層間ポテンシャル差異によりバンドギャップ形成が可能な二層グラフェンを調査した。表面吸着子等からの界面電荷移動によってもポテンシャル差異導入は可能であるから、電子デバイスに必須の電極接合においても形成されるはずである。そこで、バンドギャップ形成に伴って期待される超線型な電流電圧特性に着目し、二層グラフェンの電極接合部におけるバンドギャップ形成の確認に初めて成功した。 本研究は、グラフェンの光酸化による端からの絶縁体化を用い、非絶縁体グラフェンチャネルの狭細化を狙う。そこで、酸化度の影響を調査するために、水中紫外光照射と200℃の真空加熱により形成した低酸化度グラフェンの外来水分子吸着センシングを調査した。高感度検出には、紫外光照射直後の高濃度pドープ状態ではなく、電荷中性点付近の状態が望ましい。0.024%の酸化度では上記の真空加熱によっても高pドープのままであったが、0.01%という極低酸化度では電荷中性点付近の状態が容易に実現され、また、pristineなグラフェンよりも検出感度が高いことを確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは「ゲート制御型端選択的グラフェン光酸化」の各種パラメータに対し、酸化進行速度がどう依存するかを詳らかにしなくてはならない。これまでに、負のゲート電圧でのみ酸化が進行すること、大きなドレイン電圧で進行速度が速まること、周囲環境の相対湿度(空気中の水蒸気量)が多いほど酸化度が高いことを見出しているが、まだナノリボンを得るまでには至っていない。しかし、本現象にも大きな影響を与える電極接合に関して二層グラフェンの電極接合部におけるバンドギャップ形成の実験的証左の初観測に成功するとともに、光酸化グラフェンの酸化度の影響に関して極低酸化グラフェンが水分子吸着センサとして有効であることを示している。これらは当初の研究計画には無かった進展である。以上を総合的に判断し、上記の自己評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後はナノリボン化の達成に向け、主に残された他のパラメータについて調査することで、エッチングレートの精密制御を達成する。また、基板表面状態の影響を知るために、二酸化ケイ素基板表面の疎水化処理を行うとともに、昨年度末に導入したアライメントステージを用い、種々の基板上に転写したグラフェン層を利用して調査する。更に、形成したグラフェンナノリボンを用いたFETのバンド構造を決定するために、ロックインアンプを導入し高感度分光測定に挑戦する。
|
Research Products
(9 results)