2014 Fiscal Year Annual Research Report
高分子超薄膜を用いた未活性浮遊細胞固定技術“ナノラッピング”の確立と機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Nanomedicine |
Project/Area Number |
26107716
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
岡村 陽介 東海大学, 創造科学技術研究機構, 講師 (40365408)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生体材料 / 高分子超薄膜 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子を超薄膜(膜厚100 nm以下)に加工すると、ナノ厚特有の高柔軟性・高接着性が発現する。このため、反応性官能基や接着剤を使用せず物理吸着のみで種々の界面(皮膚や臓器等)に貼付できる。生体組織や浮遊細胞のイメージングは、ガラス基板に乗せて緩衝液を滴下した状態で観察するのが常套手段である。しかし、緩衝液の蒸発に伴う生体組織や浮遊細胞の乾燥やステージを移動する際のぶれがしばしば問題となる。本研究では、生体組織や浮遊細胞を超薄膜で固定する技術「ナノラッピング」を提案し、新規イメージングツールに応用する。今年度は前者(生体組織のナノラッピング)に関して報告する。具体的には、撥水性超薄膜を創製して生体組織をラッピングし、生体組織の保水・保定を実現する。 シリコン基板上にポリビニルアルコール(PVA)水溶液、含フッ素高分子溶液の順にスピンコートした。基板ごと純水に浸漬させたところ、PVA犠牲層が瞬時に溶解し、基板の形状を維持した超薄膜が水面に浮いた状態で回収できた(膜厚: 18 ± 0.2 nm)。実際、撥水性超薄膜の水接触角は111 ± 1°と計測され、その表面は確かに撥水性であった。以上より、撥水性超薄膜の創製に成功した。 生体組織(脾臓)を用いて保水・保定能を評価した。撥水性超薄膜で脾臓を基板ごとラッピングでき、ガラス基板間に安定に固定化された。恒温恒湿条件下に静置したところ、ラッピングしない群と比較して、明らかな保水効果が観察された。これは、超薄膜の撥水性を保水能に転換した結果であり、撥水性超薄膜のユニークな特徴を見出した。撥水性超薄膜によるラッピングは保水・保定を実現する生体組織用イメージングツールへの応用の可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、撥水性超薄膜を新規に創製した。それを用いて生体組織をラッピングすることにより、生体組織の保水・保定を実現するイメージングツールへの応用の可能性を見出すことができた。したがって、本年度の研究目標は計画通りに達成され、順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、浮遊細胞を超薄膜で固定する技術「ナノラッピング」を実現し、イメージングツールとしての応用を目指す計画である。まず、ポアを有する超薄膜の創製法を確立し、浮遊細胞のラッピング能を評価する。浮遊細胞は未活性状態で固定され、ポアから分散媒のみが惨出しながらポア超薄膜が基板に密着し貼付できることを実証する。次いで、共焦点顕微鏡にて浮遊細胞をイメージングし、未活性状態でぶれずにイメージングできることを実証する。さらに、刺激剤の添加で血小板が瞬時に刺激可能であり、且つその形態変化後も追従して固定できるポア超薄膜の組成を最終決定する。
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Research Products
(5 results)