2014 Fiscal Year Annual Research Report
画像解析による微弱電流依存性の細胞内輸送亢進機構解明と革新的指向性DDSへの展開
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Science for Nanomedicine |
Project/Area Number |
26107718
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
小暮 健太朗 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (70262540)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 微弱電流 / 細胞内輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
微弱電流処理時の細胞膜電位変化を評価するため、膜電位依存性蛍光色素DiBAC4(3)存在下、マウス繊維芽細胞NIH-3T3に微弱電流処理したときの蛍光強度変化を検討した。その結果、DiBAC4(3)の相対的蛍光強度は、約30%増大していた。この結果から我々は、微弱電流刺激によって、電位依存性Ca2+チャネルの活性化を介したCa2+流入が誘導されるのではないかと予想し、特にTRPチャネルが関与しているのではないかと推察した。我々は、電位変化に応答するTRPチャネルが、微弱電流処理時に活性化され、Ca2+誘導性の細胞シグナル伝達活性化が誘起されるのではないかと考えて、TRPカチオンチャンネル阻害剤SKF96365による細胞内輸送亢進に対する影響を検討した。その結果、SKF96365によって微弱電流処理による蛍光ラベル化カチオンリポソームの細胞内輸送亢進が抑制されることが明らかとなった。これらのことから、微弱電流処理によって、TRPチャネル等を介したCa2+流入が誘導され、それにより細胞内シグナル伝達が活性化し、細胞取込みおよび細胞内輸送が亢進することが示唆された。 蛍光ラベル化リポソームやsiRNAでは、蛍光を細胞内に確認できるが、エンドソーム内か否かについては、判別し難い。このことを解決するために、領域内の名古屋大学樫田啓准教授の開発したモレキュラービーコン(MB)を用いることとした。ルシフェラーゼ安定発現B16-F1メラノーマ細胞に対してルシフェラーゼ配列含有MBを添加し、微弱電流処理した後、蛍光顕微鏡で観察したところ、MB由来の赤色蛍光が観察された。このことから、微弱電流処理によってMBが取り込まれ、細胞質まで輸送されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、1)イメージング手法による微弱電流が誘起する細胞内輸送経路活性化の可視化と2)微弱電流による細胞内輸送経路活性化の原因となる分子反応パラメータの解明、を年度計画としていた。1)に関して、マイクロチップ上での細胞培養が当初予定通り行えていないため、個別細胞の微弱電流処理が行えていない。また、GFP融合チューブリンの細胞内発現において問題が生じたため、微小管輸送とリポソームの細胞内移動の定量的評価に至っていない。そのため、当初予定よりも遅れている。しかしながら、分子反応パラメータとして膜電位依存性のTRPチャネルの関与を見出すとともに、当初予定していなかったモレキュラービーコンを用いることで、遺伝子発現などを介さずに非常に短時間で細胞内輸送経路の活性化が誘起されることを見出したことから、2)に関しては大きく進展したと考えており、総合してやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、領域内共同研究により細胞質に存在するmRNAと結合すると蛍光を発するモレキュラービーコン(MB)を微弱電流負荷条件で共存させると、細胞質にMBが送達されることを見出した。これまでリポソームなどを用いて細胞可視化を試みてきたが、細胞質までの送達を評価する手段がなかった。しかし、MBを用いることで、外来物質が細胞質まで送達される効率等を可視化し、定量解析できる可能性が示されたことから、今後はMBを用いた微弱電流による細胞内輸送の可視化に注力して解析を行う。さらに、初年度予定通りに進まなかった微小管輸送と外来物質の細胞内移動の定量的解析にも取り組む。また、初年度の解析により、物理刺激によってカチオン輸送を行うTRPチャネルの関与が示唆され、本現象の分子反応パラメータである可能性が見出された。そこで、TRPチャネル阻害剤および細胞内取り込み機構阻害剤を用いて、微弱電流刺激による細胞内輸送の詳細なメカニズムを解明する。またTRPチャネルは、物理刺激以外に低分子物質によっても同様のシグナル伝達を行うことが知られていることから、それらの物質を用いて同様の現象が誘起されるのか検討する。これらの知見と既に確立しているキャリアー開発技術を組合せ、微弱電流と同様の効果を示す分子を表面提示した革新的アクティブDDSキャリアーの開発を目指す。
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Research Products
(5 results)