2014 Fiscal Year Annual Research Report
星間塵表面反応による有機分子の重水素濃集:炭素鎖伸長による濃集度の変化
Publicly Offered Research
Project Area | Evolution of molecules in space: from interstellar clouds to proto-planetary nebulae |
Project/Area Number |
26108501
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
大場 康弘 北海道大学, 低温科学研究所, 特任助教 (00507535)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 重水素濃集 / 化学進化 / 星間分子雲 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は炭素数2の有機アミン化合物であるエチルアミン(CH3CH2NH2:EtNH2)と重水素(D)原子との反応による水素(H)-D置換反応を実験的に検証し,炭素数1のアミン化合物であるメチルアミン(CH3NH2)の先行研究結果(Oba et al. 2014)と比較した。 実験はすべて,ASURAと名付けられた超高真空反応チャンバーでおこなわれた。ASURAはおもに,反応チャンバー,原子源チャンバーで構成され,複数のターボ分子ポンプにより,装置内部が排気され,その到達真空度はおよそ10-8Pa程度である。実験操作は,まずEtNH2を10-30ケルビンに冷却された反応基板上に蒸着し,固体EtNH2層を作製した。そこへ,原子源で作製したD原子(100K)を照射し,分子組成の変化をフーリエ変換型赤外分光光度計(FTIR)で測定した。 得られた固体EtNH2のFTIRスペクトルは,アルキル基およびアミノ基に典型的な吸収をし,不純物はほとんど含まれていないことがわかった。固体EtNH2にD原子を照射すると各ピークの強度が減少し,同時にC-D伸縮振動に由来する新たなピークの成長が見られ,遅れてN-D伸縮振動に由来するピークの成長が見られた。これらの結果は,メチルアミンと同様に炭素,窒素に結合する水素がともに重水素と交換可能であるだけでなく,炭素に結合する水素のほうが速く交換することを示唆した。 一方,D原子との反応速度はメチルアミンよりもエチルアミンのほうが有意に遅いことがわかった。これはアルコールを用いた同様の研究(Nagaoka et al. 2008; Oba et al. in prep.)と定性的によい一致を示した。つまり,炭素鎖が伸長するほどH-D置換速度は遅くなる傾向が見られた。この原因についてはまだはっきりとわかっていないが,極低温固体表面で分子構造などが影響していると考えられる。本研究結果から,分子量の大きな星間分子は重水素に比較的乏しいことが予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的の一つであるエチルアミンの重水素濃集について,おおよそ期待通りに成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
エチルアミンと同様に,エタノール,ジメチルエーテルについて研究を進めていく。
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Research Products
(10 results)