2014 Fiscal Year Annual Research Report
原始惑星系円盤のスノーラインへの観測的制限
Publicly Offered Research
Project Area | Evolution of molecules in space: from interstellar clouds to proto-planetary nebulae |
Project/Area Number |
26108512
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
本田 充彦 久留米大学, 医学部, 助教 (40449369)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 光学赤外線天文学 / 星惑星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、原始惑星系円盤のH2O氷の分布を高解像度近赤外多色撮像観測から求め、究極的には惑星系形成において重要なH2Oスノーラインの直接空間分解検出を達成することにある。この観測手法は、我々のグループが世界に先駆けて提案し(Inoue, Honda, et al. 2008, PASJ)、実際に有効であることを観測的に実証した(Honda, Inoue, et al. 2009, ApJ)。本研究はこの手法を様々な原始惑星系円盤に適用し、統計的な議論を進める一歩を築くことであった。H26年度はGemini南望遠鏡に搭載した近赤外コロナグラフ撮像装置NICIを用いた若い中質量星HD100546原始惑星系円盤の観測データの解析を完了し、モデル予想(Oka et al. 2012, ApJ)との比較を行い、円盤表層における氷分布において重要なプロセスと考えられている光脱離効果の有無の検証を行った。その結果、光脱離プロセスが有効であるという兆候が見られた。しかしながら、PSF差し引きによる系統誤差要因が大きく、最終的な結論を見出すには系統誤差要因を減らす観測手法が望まれることが分かった。これには、新規観測機能(Lバンドにおける偏光差分撮像ADIや偏光差分分光)の開発が必要と考えられる(Honda et al. 2016, ApJ)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度はGemini南望遠鏡に搭載した近赤外コロナグラフ撮像装置NICIを用いた中質量の若い星であるHD100546原始惑星系円盤の K(2.2um), H2Oice(3.1um), L’(3.8um)の多色近赤外高解像度撮像データの解析を行い、予想通り水氷吸収featureを検出し、円盤表層に水氷が存在する観測結果を得た。また、円盤表層における氷分布において重要なプロセスと考えられている光脱離効果を考慮したモデル(Oka et al. 2012)との比較を行った。この部分で理論モデル担当者の就職等に伴う遅延があり、論文化がH27年度にずれ込んだ。比較の結果、光脱離が有効に働いているモデルと観測結果がより一致している兆候を得た(Honda et al. 2016, ApJ)。ただし、観測データの系統誤差要因が大きく、最終的な結論には至っていない。今後はこの系統誤差要因を低減する必要がある。 また、スノーラインへの観測的制限であるが、我々のHD100546のデータから、中心星近傍0.3”近く(実距離にして約30AU)まで迫ることができ、これより遠方において円盤表層に水氷が存在することを確認できたが、水氷が昇華して消失するスノーラインの直接検出には至らなかった。モデル計算との比較から、この星の光度などを考慮すると、HD100546のスノーラインは約20AU(0.2”)程度近傍まで迫る必要があり、inner working angle (IWA)の改善が必要であることが課題として明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を進めるうえで2つの課題が明らかとなった。一つは測光精度の向上、もう一つはより中心星近傍の構造に迫るための、IWA(inner working angle) の改善である。 これらを一挙に改善する手法として、より短波長側の近赤外線領域で効果が実証されている偏光差分撮像(ADI)手法があげられる。ADIは直交する2軸の直線偏光成分を、ウォラストンプリズム等で分離して同時に観測することで、より精度の高い偏光観測を行うことができる偏光観測手法である。この観測手法は偏光精度の向上に加え、原始惑星系円盤の偏光した散乱光の観測時には無偏光の明るい中心星成分をきれいに落とすことができるため、IWAを向上できることが確認されている。 これまで我々はいわゆる’Luck imaging’法による、PSF差し引きにより原始惑星系円盤からの散乱光強度分布を求めてきた。幸い原始惑星系円盤散乱光は偏光しているため、ADI手法が効果的に適用できる。しかし、現状の8mクラス望遠鏡には、本観測で必要なL-bandでADIを実現している装置はほとんどない状況である。幸い、すばる望遠鏡の近赤外撮像分校装置IRCS において、近赤外線JHKバンドにおいて偏光観測機能が実装された。そこで、この機能をLバンドに拡張できれば、本研究をさらに進めることが可能となる。 すばるIRCSにLバンド偏光機能を実現するためには、Lバンドで使える大径(Φ>94mm)の半波長板、および較正のための偏光子(ワイヤグリッド)が必要である。これらの光学部品の作成に向けて、(株)光学技研と検討を進めている。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] High-resolution 25 μm Imaging of the Disks around Herbig Ae/Be Stars2015
Author(s)
Honda, M., Maaskant, K., Okamoto, Y. K., H. Kataza, T. Yamashita, T. Miyata, S. Sako, T. Fujiyoshi, I. Sakon, H. Fujiwara, T. Kamizuka, G. D. Mulders, E. Lopez-Rodriguez, C. Packham, T. Onaka
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Journal Title
The Astrophysical Journal
Volume: 804
Pages: 143, 1--8
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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