2014 Fiscal Year Annual Research Report
酵素反応に伴う電子伝達・プロトン移動由来内部磁場のミュオン測定
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier of Materials, Life and Elementary Particle Science Explored by Ultra Slow Muon Microscope |
Project/Area Number |
26108714
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
清谷 多美子 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (00276627)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 量子ビーム / 生物物理 / 酵素反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の平成26年度では、昨年12月にJ-PARC/MLFミュオン実験施設で、酵素反応のμSR観測の予備的実験を行い、酵素反応に伴う電子伝達・プロトン移動により生ずる生体内の内部磁場によると思われる現象が観測された。この予備的実験では、μSR測定で必要な量のBPTIが入手困難なため,同等の阻害能を有するLima Bean Trypsin Inhibitor (LBTI) とChymotrypsinとの複合体を測定試料として用いた。ChymotrypsinはTrypsin同様、タンパク質を分解するセリンプロテアーゼである。Trypsin-LBTIとChymotrypsin-LBTIの各複合体について測定試料を準備したが、測定前の予備実験で後者の方がミュオン実験に相応しい調整であると判断し、これを用いた。 現在、継続して解析を進めていることころであるが、装置のartifact(系統誤差)と考えられる量をAgのμSR測定データで補正した後、酵素反応を行っているタンパク質のμSR測定結果をRisch-Kehr式で解析すると、2つの緩和振動数Γearly、Γlateを導入する必要があることが判明した。Γlateは酵素反応に伴う電子伝達・プロトン移動により生ずる内部磁場に起因するものと考えられる。この実験は予備的なものであり、今年度はこれを確認するために、-50℃以下にして酵素反応を凍結、あるいはLBTIの代わりに酵素反応を完全に止める阻害剤Diisopropyl Fluorophosphate (DFP)を使う等のコントロール実験を試みる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は超低速ミュオン実験装置で実験を行うことを目的としているが、装置のトラブルやJ-PARCの事故などにより立ち上げ作業が遅延しており、さらに今年1月にJ-PARC/MLFミュオン実験施設で発生した火災の影響で4月現在も利用再開が未定である。加えて、J-PARC/MLFの実験課題募集が、その実験課題募集直前の実験期間に実験を実施する以前に行われることから、実験結果を基に実験課題申請を行わなければならないこともあり、次回の実験が早くとも1年後となってしまい、計画通りに課題申請および実験ができないことが原因である。 しかし、昨年12月にJ-PARC/MLFミュオン実験施設で、酵素反応のμSR観測の予備的実験を行った結果、これまで酵素反応をしないタンパク質等のμSR観測とは明らかに異なるスペクトルが観測されたことは、今後の本測定への励みになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年12月にJ-PARC/MLFミュオン実験施設で、酵素反応のμSR観測の予備的実験を行い、酵素反応に伴う電子伝達・プロトン移動により生ずる生体内の内部磁場によると思われる現象が観測され、現在、解析を進めていることころであるが、装置のartifact(系統誤差)と考えられる量をAgのμSR測定データで補正した後、酵素反応を行っているタンパク質のμSR測定結果をRisch-Kehr式で解析すると、2つの緩和振動数Γearly、Γlateを導入する必要があることが判明した。Γlateは酵素反応に伴う電子伝達・プロトン移動により生ずる内部磁場に起因するものと考えられる。この実験は予備的なものであり、今年度はこれを確認するために、-50℃以下にして酵素反応を凍結、あるいはLBTIの代わりに酵素反応を完全に止める阻害剤Diisopropyl Fluorophosphate (DFP)を使う等のコントロール実験を試みる必要がある。 今年1月にJ-PARC/MLFミュオン実験施設で発生した火災の影響で4月現在も利用再開が未定であり、さらに装置のartifact(系統誤差)のない装置での実験も必須であることから、国外のミュオン実験施設での実験を計画している。具体的には英国のRIKEN-RALあるいはスイスのPSIで実験を行うことを検討している。実験としては、Chymotrypsin-LBTI、Chymotrypsin-DFPの各複合体、Chymotrypsin、LBTIの各単独、計4種類の試料を準備し、温度および磁場を変化させた条件下でのミュオン実験を検討している。
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