2014 Fiscal Year Annual Research Report
非磁性金属薄膜における電流誘起スピン蓄積の深さ分解測定
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier of Materials, Life and Elementary Particle Science Explored by Ultra Slow Muon Microscope |
Project/Area Number |
26108717
|
Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
伊藤 孝 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター, 研究員 (10455280)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 量子ビーム / 表面・界面物性 / 超低速ミュオン |
Outline of Annual Research Achievements |
スピン軌道相互作用の強いPt等の非磁性金属薄膜に電流を印加すると、スピンホール効果により印加電流に対し垂直方向に純スピン流が誘起され、表面近傍にスピン蓄積が生じる。このスピン蓄積はスピン拡散理論によって定量的に記述できると考えられているが、最表面以外はスピン蓄積の観測が困難であり、従って深さ方向のスピン分布には検証の余地が残る。本研究では、超低速ミュオンを用いてこの電流誘起スピン蓄積の完全な深さプロファイルを得ることを目指している。研究計画初年度となる平成26年度は、超低速ミュオンビーム照射実験のための準備として、主に以下の3点について研究開発を行った。 (1)試料輸送ベッセルの開発: 非磁性金属薄膜試料の作成から超低速ミュオンビーム照射実験までを一貫して真空中で行うために、直線・回転導入機とバッテリー式イオンポンプを備えた試料輸送ベッセルを開発した。 (2)パルス電流印加回路の試作: ミュオンパルスに同期して非磁性金属薄膜にパルス電流を印加するための回路を試作し、要求性能を十分に満たすことを確認した。今後、モジュール化した上でビーム照射実験に投入する予定である。 (3)薄膜基板のバルクμSR測定: 薄膜成長用基板として標準的に用いられるSrTiO3等の物質についてバルクμSR測定を行い、薄膜試料の超低速ミュオン測定に際してバックグラウンドと成り得る基板からのμSR信号の温度依存性を明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画通り進んでおり、成果も出だしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
J-PARCにおける超低速ミュオンビームの供給開始に備え、以下の研究開発を進める。 (1)Pt・Cu薄膜試料の作成と膜厚・ラフネスの評価 (2)超低速μSR用試料ホルダーの製作と高出力パルス電流モジュールの完成 (3)ミュオン打ち込み深さ分布を考慮したデータ解析プログラムの完成 (4)薄膜基板選定のためのバルクμSR実験(前年度より継続) 超低速ミュオンビームラインの稼働後、本研究領域A01班のビーム調整作業に参加し、本実験に適したビームチューニングを探る。物性測定に耐え得る高品質なビームが得られたならば、それを用いてPt・Cu薄膜試料の超低速μSR測定を行い、スピンホール効果によって表面近傍に誘起されたスピン蓄積の深さプロファイルを取得する。
|
Research Products
(6 results)