2014 Fiscal Year Annual Research Report
超低速ミュオンの再加速に最適な超高速光伝導スイッチによる電界集中型加速器の開発
Publicly Offered Research
Project Area | Frontier of Materials, Life and Elementary Particle Science Explored by Ultra Slow Muon Microscope |
Project/Area Number |
26108718
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
吉田 光宏 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, 准教授 (60391710)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超低速ミュオン / 光伝導スイッチ / 加速器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、超低速ミュオンの再加速の加速方式として最適な、超高速光伝導スイッチによる電界集中型加速器の開発と、超低速ミュオンを再加速する事によるミュオンマイクロビームの生成である。 ミュオン等の重い粒子の加速では、加速器構造を粒子速度に合わせる必要があり、非相対論領域の高周波加速器は複雑かつ大型化してしまう。そこで近年登場した新しい加速技術である、超高速光伝導スイッチを用い、円周上に配置した光伝導スイッチが作る電界を中心で集中させる事で、高い電界を得る事が可能である。 光伝導スイッチの性能を決めているのは、移動度、耐圧等の材料の物性である。光伝導スイッチの性能評価にはウェハーを導体で挟んだ簡単な部品で評価が可能である。耐圧が高い材料は一般的にバンドギャップが高い物質であり、必然的に短波長のレーザーが必要となるが、フォトン数も減るため不利になる。 平成26年度はシリコン、SiC等の半導体ウェハーを用いて光伝導スイッチの評価を行った。 シリコンでは常温での抵抗値が低い事が問題であり、これを冷却し抵抗値の向上を評価したが、目標値には至らなかった。その原因としてアルミを金属膜として使用したため、オーミック接合により伝導帯に電子が注入された事が原因であると考えられる。 またSiCについては、紫外線の吸収係数が大きく、ウェハーの厚みに対して、十分に低いON抵抗が得られなかった。これらを踏まえて、金属膜材質を変更したシリコンや、GaAsウェハーを新たに使用して、光伝導スイッチの評価を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光伝導スイッチの性能を決めているのは、移動度、耐圧等の材料の物性である。 これらを評価するための半導体ウェハーの金属膜の成膜や、評価装置等については本研究で準備が完了し、サンプルの評価を順に行う事ができるようになっており、順調に進展している。 半導体の光伝導スイッチとしての性能については、物理的な理解も得られ、現在改善を行っており、近々性能が改善される見込みがある。 また加速器の全体設計も進んでおり、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
光伝導スイッチの性能を向上させるため、シリコンウェハーについては、オーミック接合を避けるため、白金等のバンドギャップの大きい金属膜で材料評価を進めている。 またGaAsの半導体についても、当初はウェハーの単価が高価だったため、安価なシリコンウェアハーを検討していたが、GaAsウェアハーの安価な入手方法が見つかり、GaAsウェハーによりシステムを構成できるようになった。 GaAsは直接遷移な上に、キャリアの移動度が大きく、光伝導スイッチとしては理想的な材料である。これらの製作、評価を進める。また加速器システムとしての基本設計として光伝導スイッチのスイッチング電圧を10kV、スイッチングの立ち上がり速度100psで設計を進めている。また電界集中による電界圧縮比5を得られる計画である。従って1モジュールで50kV程度となり、これを19スタックして全体で950keVのユニットを完成させる。加速試験としては、この加速方式では、光伝導スイッチへのトリガーのタイミングを粒子速度に合わせれば様々な重さの粒子に対応できるため、ミュオン加速の事前試験として、電子や陽子の加速試験を行う。
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