2014 Fiscal Year Annual Research Report
第一原理統計熱力学に基づくMg基合金LPSO構造の熱力学的安定性の理論計算
Publicly Offered Research
Project Area | Materials Science of synchronized LPSO structure -Innovative Development of Next-Generation Lightweight Structural Materials- |
Project/Area Number |
26109710
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
弓削 是貴 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70512862)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 不規則相 / 熱力学的安定性 / 第一原理計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
Mg 基 3 元系合金 LPSO 相の熱力学的安定性を第一原理計算に基づいて明らかにする.その際, 合金の原子配置や組成,積層の自由度を定量的に考慮した上で原子スケールの微視的な観点から の考察を行った.従来研究では LPSO 相の安定性に対する電子系のエネルギーの寄与のみが考慮さ れていたが,本研究では格子系のエネルギーの寄与についても第一原理から定量的に評価した.その結果は以下の通りである. まず不規則相とLPSO相の形成自由エネルギーを定量的に評価した,その結果,LPSO相は不規則相に対して熱力学的に安定であり,同じ積層構造の下では規則不規則相転移温度が900K程度になることを確認した.次に,熱力学的安定性に対する格子系の寄与の影響を,弾性定数に基づいて吟味した.その結果,同じ組成において不規則相とLPSO相の体積弾性率に有意な差はなく,格子系のエネルギーは熱力学的安定性に対して定性的には無視できることを明らかにした.さらに,積層欠陥が熱力学的安定性に及ぼす影響を,不規則相の形成エネルギーに基づいて吟味した結果,fccとhcp積層の平均よりも積層欠陥を導入した方が不規則相は熱力学的に安定であり,したがってMg-Y-Zn合金においてはL12クラスターを形成していなくても相分離した場合には積層欠陥を複数導入する方が安定であることを明らかにした.最後に,L12クラスター形成について不規則相の原子配置の短範囲の規則化の観点から検証した.その結果,不規則相は完全に不規則な原子配置と比較して特に Mg-Mg, Y-Zn,Zn-Zn 最近接ペアを好む傾向にあり,これは L12 クラスターを有する LPSO 構造の傾向と定性的 に一致することを確認した.以上のことから,LPSO相の熱力学的安定性は,競合する不規則相の熱力学的安定性や構造と密接に関連していることを明らかにした.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算とクラスター展開法を組み合わせた,可能な全ての微視的状態に対するエネルギーの包括的計算を平成26年度に完了する予定であったが,Mg基合金の精確な多体相互作用の抽出に必要な第一原理の計算量が膨大であり計算時間も当初の予想を上回っているため,本年度の前期も引き続き計算を行って上記研究を遂行する.一方で,不規則相に基づいたLPSO相の熱力学的安定性の研究が当初の予想を遥かに上回る形で成功しており,本年度は26年度に実施していない,他のMg基合金系についても系統的に計算し,体系的な理解を目指す予定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の研究実施状況を踏まえると,積層構造の自由度を考慮した不規則相の熱力学的安定性や原子配置の短範囲の規則化から,構成元素の違いによるLPSO構造の熱力学的安定性や原子スケールでの構造の違いに対する系統的な知見を得ることが期待できるため,優先的に実施する.より詳細な熱力学的安定性については,上記で得られた比較的安定な複数の積層構造に対して第一原理計算とクラスター展開法の組み合わせを適用することで定量的に評価する.一方,濃度と構造変調の同期の原因については明らかになっていないため,当研究グループでは,電子状態,特にフェルミ面のネスティングに起因したcharge density waveの可能性について検証を進める予定である.
|