2014 Fiscal Year Annual Research Report
合成化学的分子配線法を基軸とする外部刺激応答性分子デバイスの作製
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
26110514
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
寺尾 潤 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00322173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子エレクトロニクス / 被覆型分子ワイヤ / 機能性高分子 / 燐光発光特性 / フォトクロミック / 光スイッチ / ポルフィリン / メタロポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
今回,π共役鎖中に外部刺激応答性官能基を導入し,機能性分子ワイヤの合成を目指した。まず,被覆型π共役モノマーと種々の機能性π共役分子との共重合反応により被覆型機能性分子ワイヤの合成を行った。その結果,酸化還元応答性,光応答性,イオンセンシング能,燐光発光能を有する分子ワイヤの合成に成功した。例えば,チアフルバレンユニットを有する分子ワイヤでは酸化還元により,蛍光発光特性が変化し,ジアゾベンゼンおよびジアリールエテンユニットを有するものでは,フォトクロミックにより分子ワイヤの形状が変化することを明らかとした。また,ポルフィリンユニットを有する分子ワイヤではポルフィリンに含まれる金属の種類により光誘起導電性が変化することを見出し,ポルフィリン-ピリジンの配位結合を有する分子ワイヤは一酸化炭素および光照射により,分子ワイヤが自己修復機能を有することを見出した。また,白金-アセチリド結合を有する被覆型メタロポリマーは固体状態においても強い燐光発光特性を有することが明らかとなった。 また,今回我々は,高い電荷移動度を示す被覆共役モノマーを合成し,これを電極間で重合させ,ナノ電極間距離に依存しない分子配線法の開発を目指すと共に,高密度かつ高再現性を有する一般的な分子配線法としての確立を目指した。まず,両端にHayカップリングおよびオレフィンメタセシス反応点を有する被覆型π共役モノマーを合成し,表面に重合開始点を導入した約20 nmのギャップを持つ金のナノ電極間で重合させ,両側の電極からポリマーを伸長させて配線することを試みた。反応後の各電極で電流値が観測され,本重合法での配線に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、分子内スリッピングを導入した新手法により汎用性の高い被覆共役分子の合成法の開発に成功すると共に、本法を応用し、固体中において燐光発光特性を示す被覆型白金アセチリドポリマーの合成に成功した。また、被覆型共役分子を無機固体材料表面上に単分子性を保持した状態で高密度に導入することに成功した。この様に、当初の研究計画を着実に遂行し成果をあげており、最終目標としているナノ分子デバイス作製は大いに期待出来る。また、被覆型分子ワイヤの燐光発光特性、自己修復機能、pHセンシング能等、数々の新しい知見も創出しており、研究開始時と比べ期待以上の研究の進展があった。
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Strategy for Future Research Activity |
無機基板表面を有機共役分子で修飾することは, 互いの電子的, エネルギー的相互作用の点から,新たな機能を発現することが期待される。しかし, 無機材料に接合された共役分子の単分子としての物性は, 近接分子との相互作用で損なわれるという問題を抱えている。そこで我々は, 共役分子をロタキサン構造で三次元的に被覆し, 分子間相互作用が抑制された分子を合成した。その被覆効果はITO基板に対する分子の接合挙動を観察することで評価した。その結果,ロタキサン型アンカー分子はどちらも分子間相互作用が抑制され基板上に直立していることが示唆された。今後,アンカー分子上のヨウ素部位に様々機能性有機官能基をクロスカップリング反応により導入すると共に,金のナノ電極表面をチオール基が導入されたアンカー分子により修飾し,重合反応による分子配線を試み,様々な機能性ユニットを有する分子素子の作製を試みる。また、表面吸着分子数をSTM及びCV測定により見積もって頂く予定である。
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