2014 Fiscal Year Annual Research Report
脱着可能な分子-電極接合法の確立と応用
Publicly Offered Research
Project Area | Molecular Architectonics: Orchestration of Single Molecules for Novel Function |
Project/Area Number |
26110515
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
奥山 弘 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60312253)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はフェニル基に代わる安定した接合を探索した。そこで,ハロゲンと金属の相互作用に着目し,パラクロロフェノキシ分子(p-C6H4ClO)を用いてスイッチ実験を行った。分子は基板表面に対して酸素原子を介して強く結合しており,一方のパラ位に導入した塩素原子を介して探針との接合形成を試み,その可逆スイッチングに成功した。特徴としては,フェニル基との接合に比べて,構造的に「高い」位置まで接合が安定に保持される。これにより分子の特徴がより顕著な伝導特性が期待される。現在は非弾性トンネル分光による振動モードの検出を進めている。 加えて,分子周りの環境が伝導度に与える影響について実験を行った。非破壊のまま可逆的に接合を形成することにより,接合状態を変化させずに環境だけを変化させて伝導度を比較することが可能になった。具体的には,孤立分子に対する伝導度,および様々な分子密度のアイランドの分子に対する伝導度を計測し,分子密度が伝導度に与える影響を検出することに成功した。 さらに機能性分子の表面蒸着とその実空間分析を目的として,A01小川グループと共同研究を行った。小川研で設計,合成されたポルフィリンアレー分子を金表面に蒸着し,STMを用いた単分子観測と電子状態計測を行った。まずアレーの構成ユニットである,freebase porphyrin (2-H)をAu(111)に真空蒸着し,その構造と電子状態の分析を行った。STM像には,中央のポルフィリン環と,4本のアルキル鎖,および1つのヒドロキシフェニル基が区別して観察される。電子状態については,HOMOとLUMOのピークがそれぞれ±1.2 eVに観測された。さらに,ポルフィリンアレー(Zn-P)3をエレクトロスプレー法により表面に単離し,単分子レベルでSTM観測を行うことに成功した。3量体アレー内部の構成ポルフィリン分子が明瞭に観測され,それぞれに局在する電子状態の評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非破壊的に分子と電極の接合を脱着させる方法をより一般化するため、塩素原子と電極の接合に拡張した。塩素原子は安定して電極に脱着することを示した。加えて、A01班の小川グループとの共同研究により、機能性ポルフィリンアレーの実空間観察を行った。個人研究に加えて共同研究で成果を出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度はフェニル基に加えてクロロ基を用いた分子接合に成功した。今年度はこれら安定な分子接合を用いた非弾性トンネル分光の実験を行う。それにより、分子接合における振動-電流相互作用に関する知見を獲得し、分子接合の安定性について精密な議論を行う。さらに、環境が与える分子伝導への効果として、電極の酸化反応が分子伝導に与える影響について調べる。大気中では電極は酸化しており、その影響は分子デバイスの性質に直結するものであり、原子レベルで明らかにする。さらに、エレクトロスプレー法による非破壊的な分子蒸着とSTM観測により、今後はプログラム合成されたポルフィリンアレーの電子状態分析を進める。
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Research Products
(8 results)