2014 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚におけるガングリオシドの機能解明
Publicly Offered Research
Project Area | Deciphering sugar chain-based signals regulating integrative neuronal functions |
Project/Area Number |
26110717
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Research Institution | Tohoku Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
井ノ口 仁一 東北薬科大学, 薬学部, 教授 (70131810)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 難聴 / ガングリオシド / 内耳有毛細胞 / ラフト / 聴毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
音の受容器官である「蝸牛」では発生あるいは生後成熟期間において,様々な糖鎖構造 の発現量・発現部位が変化することから, 複合糖質の聴覚機能への関与が示唆されていた。しかし,その報告の多くは糖脂質,プロテオグリカン,糖タンパク質の生合成および代謝に関連する酵素遺伝子群のクローニング以前になされた研究であり, 聴覚機能を制御する複合糖質分子種の同定には至っていなかった。 申請者らは,ガングリオシドGM3合成酵素(GM3S)欠損マウスが生後間もなく完全に聴力を消失することを見いだした(Yoshikawa et al., PNAS 2009)。蝸牛のコルチ器に存在する有毛細胞の聴毛の選択的変性が起こることがその原因であり,コルチ器の機能および形態の維持に糖脂質:ガングリオシドが必須であることが示した。この GM3S欠損マウスに見られるコルチ器の変性は感音性難聴の病態の一部と類似しおり,本マウスが加齢性難聴のモデルになることが期待される。最近,ヒトの GM3S欠損患者においても難聴が報告されるに至り,我々のマウスにおける発見がヒトの聴覚機能研究に適用できる可能性が強く示唆される(Yoshikawa et al., Hum Mol Genet 2015)。本申請では,「ガングリオシドが形成するマイクロドメインが聴覚機能を制御する」という作業仮説の立証に向けて、GM3を中心とした糖脂質代謝の変化およびマイクロドメイン形成による聴覚機能の調節機構、コルチ器崩壊の分子メカニズムを解明する。さらに,ガングリオシドによる難聴治療法の可能性についても検討を開始する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
GM3S KOマウスでは、生後間もなく内有毛細胞及び外有毛細胞の聴毛の変性が確認され、内有毛細胞では、聴毛間の融合、聴毛内の分子の「局在の変化」がみられる。有毛細胞の細胞膜上およびその細胞質内では、各難聴関連タンパク質がそれぞれ特徴的な局在を示し聴毛の形態・機能を維持している。この不動毛の機能的・形態的維持には同一有毛細胞のシリア間での分子連結が必須である。この分子連結の崩壊に基づく聴毛の融合がGM3S KOマウスの聴覚機能消失の原因であると考えられる。GM3S KOマウスでは、この連結(shaft connector)を担う分子である PTPRQ(Protein Tyrosin Phosphatase Receptor Q)の局在変化を確認している(Yoshikawa et al., Hum Mol Genet 2015)。
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Strategy for Future Research Activity |
GM3S KOマウスでは、この連結(shaft connector)を担う分子である PTPRQ(Protein Tyrosin Phosphatase Receptor Q)の局在変化を確認している(Yoshikawa et al., Hum Mol Genet 2015)。このほかにも、厳密な局在を示すmyosin VI, myosin VIIaおよびradixinの局在が変化したことから、GM3は聴毛の機能性膜領域(マイクロドメイン)の形成・維持には必須の分子であることがわかる。これらの知見を分子レベルで解明する為に, 1)GM3 依存性聴毛膜微小領域を介したシグナル伝達制御機構の解明。 2)GM3S欠損症治療および感音性難聴/加齢性難聴治療の基礎実験としてGM3S KOマウス,難聴遺伝子保有マウスおよびそれらのコルチ器の器官培養を用いた,聴覚障害およびコルチ器変性に対するGM3投与によるレスキュー実験。などを実施する。
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Research Products
(16 results)