2014 Fiscal Year Annual Research Report
Atg分子群による脂質・オルガネラ動態制御の新しい分子機構
Publicly Offered Research
Project Area | Multidisciplinary research on autophagy: from molecular mechanisms to disease states |
Project/Area Number |
26111511
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪井 康能 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (60202082)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | オートファジー / シグナリング / 脂肪滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の主目的は、(1)これまで解析の進んでいなかった、オートファジーが細胞の脂質代謝に与える影響を分子レベルで理解すること、また(2)真核微生物が自然界で生存するためのオートファジー機能をより詳細に理解するため、さまざまな栄養・ストレス条件変化で誘導されるオートファジーおよびそのシグナリング経路を明らかにすることである。本年度は(1)に関して、オートファジーで輸送された脂質を分解する液胞内酵素Atg15の機能解析に関して進展を見た。すなわち、Atg15の欠損した出芽酵母変異株では、細胞が増殖後定常期にある条件で、中性脂質蓄積のためのオルガネラ、脂肪滴の量が著しく減少することを見いだした。この減少は他のオートファゴゾーム形成のためのAtgタンパク質をさらに欠損させると見られなくなった。さらなる研究から、Atg15欠損株では、脂肪滴内の中性脂質分解(リポリシス)が正常株と比較して亢進していることを見いだした。 (2)に関しては、メタノールを単一の炭素源として生育可能な酵母(メタノール資化性酵母)Candida boidiniiが、環境中の窒素源の変化に応答して、選択的オートファジーを介した窒素源代謝酵素の分解を行うことを見いだした。本酵母は私たちの以前の研究から、植物葉上で生育可能であることが分かっていたが、本年度の研究から、本酵母が若い植物体上で生育する際には硝酸の資化経路が必要なことを見いだした。生育の場となる植物体が老化すると酵母はメチルアミン資化経路を誘導することから、植物のライフサイクルに応じて酵母の利用窒素源が変化することが強く示唆された。このように窒素源が硝酸からメチルアミンに変換された培養条件では、本酵母内の硝酸資化経路の酵素である硝酸還元酵素が選択的オートファジーによって液胞へと輸送され分解されることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)オートファジーが脂質代謝に与える影響として、Atg15の機能解析が大きな知見をもたらしている。これまで、オートファジーの生理機能は主にタンパク質分解・アミノ酸供給という観点から語られることが多く、その機能のためのシグナリング経路などが盛んに研究されてきた。本課題研究により、オートファジー不全による脂質リサイクリングの阻害が起こりうること、そしてその阻害が中性脂質蓄積の場である脂肪滴の量制御につながることを見いだしたことは、オートファジーの生理機能の新しい側面を理解することにつながる成果を得たと考えている。 (2)に関しても、微生物の自然界での生存戦略としてオートファジーが重要であることは私たちの以前の研究からも示されていたが、本年度の本課題研究により、植物体上の窒素源変化に対応する微生物の戦略としてもオートファジーが重要であるという知見が得られた点が大きな進展である。真核微生物における選択的オートファジーの生理学的意義が明確に示された例はこれまで少なく、植物―微生物の相互作用の詳細解明という生態学的観点からも、本研究成果は重要な知見を与えるものになったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)オートファジーが細胞の脂質代謝に与える影響の分子レベルの理解に関しては、脂肪滴を液胞内に取り込むリポファジーと呼ばれるオートファジー経路の分子機構解明が重要である。リポファジーはこれまで、哺乳類細胞や真核微生物(酵母・植物病原性真菌)などで報告があるが、その分子機構および形態学的な詳細が解明されたとはいいがたい状況にある。今後はこのリポファジーの分子機構について、出芽酵母を対象として解明することを企図している。 (2)微生物の生存戦略としてのオートファジーおよびそれを支えるシグナリング経路の解明に関しては、メタノール資化性酵母のひとつPichia pastoris を用いた研究を今後進めていく。これまでの私たちの研究等から、本酵母はペルオキシソームを分解する選択的オートファジーであるペキソファジーの機構解明のための最も進んだモデル生物となっている。特にペルオキシソームとオートファジー分子装置の橋渡しをするタンパク質Atg30のリン酸化による機能制御の仕組みが詳細に報告されている。そこで本課題においては、さまざまな環境条件でAtg30 リン酸化・脱リン酸化を行う酵素群を同定することで、本酵母の環境変動に応じたオートファジー誘導の仕組みを明らかにすることを企図している。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] The Tor and Sin3-Rpd3 complex regulate expression of the mitophagy receptor protein Atg322014
Author(s)
Masamune Aihara, Xiulian Jin, Yusuke Kurihara, Yutaka Yoshida, Yuichi Matsushima, Masahide Oku, Yuko Hirota, Tetsu Saigusa, Yoshimasa Aoki, Takeshi Uchiumi, Tadashi Yamamoto, Yasuyoshi Sakai, Dongchon Kang, and Tomotake Kanki
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Journal Title
Journal of Cell Science
Volume: 127
Pages: 3184-3196
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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