2014 Fiscal Year Annual Research Report
間葉系幹細胞による脳内環境の維持および破綻からの回復メカニズムの解明
Publicly Offered Research
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
26111701
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
平井 宏和 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70291086)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / 小脳 / プルキンエ細胞 / 脊髄小脳失調症 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊髄小脳変性症(SCA)は、根治療法が見つかっていない難病である。本研究では間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)を用いてSCA1型(SCA1)が治療可能であることを証明し、その機序を明らかにすることを目的とする。 MSCをSCA1モデルマウスの小脳皮質表面に投与すると、実質内を遊走してプルキンエ細胞と融合すること、この現象はMSCのプルキンエ細胞へのtransdifferentiationや、MSCからプルキンエ細胞へのGFPタンパク質の移動ではないことを、テトラサイクリン誘導遺伝子発現システムとCre-loxPシステムを組み合わせて明らかにした。次にMSCとプルキンエ細胞の融合はどのような条件で起こるのかを検討した。小脳の細胞と融合するとGFPを発現するように操作したMSC5万個を、生後4週の12匹のSCA1モデルマウス小脳に投与し、4匹は投与後4週(8週齢)で、残り8匹は投与後10週(14週齢)で小脳切片を作成して調べた。しかしGFPを発現する細胞は1つも観察されなかった。そこで、同様の実験を生後24~32週のSCA1モデルマウス7匹を用いて行った。SCA1モデルマウスは生後24週齢以降になると、樹状突起は著明に萎縮し、1層のプルキンエ細胞層も崩れはじめる。移植2週後の2匹のマウスから得られた39枚の小脳切片中、32個のGFP陽性細胞が観察された。またプルキンエ細胞だけでなく、星状細胞、バスケット細胞やゴルジ細胞などの介在ニューロンやバーグマングリアもGFPが陽性であった。 以上より、MSCは変性が進んではじめて融合が起こること、移植後2週間以内に起こること、またプルキンエ細胞に限定せず他の細胞にも融合すること、が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度は、MSC培養上清の静脈内投与でSCA1マウスの進行性脳内環境破綻が抑制できるのかについて調べることを目的としていた。これについても実験を進めており、一定の成果を得ているがまだ確信を得る段階には至っていない。一方、次年度にはMSCとプルキンエ細胞の融合はどのような条件で起こるのかを解明することを目的としていたが、当該年度中に結果が得られた。また当該年度に行う予定のMSCの培養上澄が脊髄病変におよぼす影響についても、形態的および電気生理学的解析を行い成果を得ている。以上より順調に実験が進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1.MSCとプルキンエ細胞の融合の生理学的意義の解明 これまでの研究で、GFPラベルしたMSCをSCA1マウスの小脳皮質へ直接投与し、3ヶ月後に観察したところ、GFPで光るプルキンエ細胞が観察され、これがMSCとプルキンエ細胞の融合によることを明らかにした。そこでMSCとプルキンエ細胞の融合の生理学的意義を明らかにする。 GFPトランスジェニックマウスの骨髄から間葉系幹細胞を分離・培養する。GFPでラベルされた間葉系幹細胞を、生後24週以降のSCA1マウス小脳に注射し2週間後に小脳切片を作成してプルキンエ細胞との融合を観察する。融合したプルキンエ細胞の変性が抑制されているか、形態学的及び可能であればパッチクランプ法で調べる。 2.融合後のMSCの核が機能しているのかを明らかにする。 プルキンエ細胞特異的な抗カルビンディン抗体と抗ヒト核抗体で2重染色して、ヒトMSC由来の核をもつプルキンエ細胞が存在することを確認する。ヒト由来のMSCの核がプルキンエ細胞内に存在している場合は、プルキンエ細胞内でプルキンエ細胞の核に分化して機能しているのかを調べる。 ヒト胎児由来MSCをSCA1マウス小脳に注射し4週間後に小脳切片を作成する。GFP陽性プルキンエ細胞の細胞質を採取し、ヒト特異的タンパク質(GluN2等を想定)のプライマー等を用いて逆転写PCRを行い、ヒトのタンパク質が産生されているかどうかを調べる。
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