2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳内環境破綻時のNaxチャンネルの生理機能の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
26111726
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
檜山 武史 基礎生物学研究所, 統合神経生物学研究部門, 助教 (90360338)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 神経科学 / 細胞・組織 / 脳・神経 / 脳神経疾患 / 生理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、NaxがエンドセリンB型受容体(ETBR)を介したエンドセリンシグナルによって開口することが明らかになった。過去の我々の知見から、Naxが活性化されると細胞内の嫌気的糖代謝が活性化し、アストロサイトからの乳酸放出につながることがわかっているが、乳酸には神経保護作用のあることが報告されている。 本年度の研究では、Naxの調節機構の解明に取り組んでいる。本年度、新たにマウスNaxの一部配列を抗原にして抗体を作成し、その抗体を用いてマウスの脳における発現を網羅的に解析した。その結果、Naxは、平常時において、弱いながらも大脳皮質や扁桃体の一部の領域に発現していること、しかも、ニューロンにも発現していることが明らかになった。ニューロンにおけるNaxの機能特性を調べるため、新たにニューロン由来の株化細胞にNaxを異所性に発現させた。電気生理学的解析から、ニューロンにおいてもグリア細胞に発現したものと同様の機能特性を示すことが明らかになった。さらに、大脳皮質サンプルを用いて、Naxのカルボキシル末端にあるPDZ結合ドメインに結合するPDZタンパク質を探索したところ、シナプス後部タンパク質であるPSD95に結合すること、PSD95との結合には、ニューロン細胞膜上で安定化させる働きがあることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度、Naxが新たにニューロンに発現していることが明らかになるなど、予想外の研究成果が得られた(PLOS ONE in press)。また、脳内の塩濃度が高くなる脳内環境の異常状態において、Naxやその他のセンサー分子が果たす役割についても、新たな事実が明らかになりつつある。しかし、その一方、当初計画していた、傷害部位においてNaxの発現が調節を受ける仕組み、Naxの働きにより神経回復が起きる仕組みに関する研究については、研究の進捗が遅れている。予想外の興味深いデータが出て来たために、そちらの方向に研究が展開してきたことが主な理由であるが、当初の計画からの遅れを取り戻すべく、努力している。
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Strategy for Future Research Activity |
1、Nax発現調節に関わる因子の探索 Naxの発現に出血性の傷害が必要か検討する。出血性の脳損傷としては、剃刀を用いた脳の部分的切断を実施する。非出血性の脳損傷としては、カイニン酸の腹腔投与を実施する他、脳内に留置した電極を介し、てんかん発作を誘発する。過去の知見からNaxの発現誘導に関与する可能性がある細胞内シグナル伝達系の阻害剤を傷害部位に投与し、Naxの発現に及ぼす影響を調べる。さらに、Nax発現細胞と他のグリア細胞、免疫細胞が出現する位置や時間の関係を調べ、それらから放出される因子がNaxの発現に影響する可能性を検討する。 2、乳酸の神経保護作用機構に関する検討 アストロサイトから放出された乳酸が神経保護や軸索再伸長の促進に関与するメカニズムは明らかになっていない。まず、乳酸がエネルギー源として利用されている可能性を探るため、神経傷害部位に乳酸を投与した場合とピルビン酸を投与した場合の死細胞の数を比較し、ピルビン酸にも乳酸と同様の神経保護作用があるか調べる。 また、乳酸が局所的なアシドーシスを起こすことで周囲の神経細胞の保護を実現している可能性を検討するため、乳酸/H+シンポーターの阻害剤を投与し、神経細胞死に及ぼす影響を調べる。
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