2014 Fiscal Year Annual Research Report
脳内温度・浸透圧の感知メカニズムとその破綻
Publicly Offered Research
Project Area | Brain Environment |
Project/Area Number |
26111732
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
富永 真琴 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 生理学 / 神経科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳脈絡叢上皮細胞において、TRPV4を通って流入したCa2+がanoctamin 1(ANO1)を活性化してクロライドイオン流出をもたらしていることを見いだし、このTRPV4/ANO1機能連関は脳脊髄液分泌の分子機構の一つと考えられた。このTRPチャネルとanoctaminの機能連関は脈絡叢上皮細胞以外でも起こっているものと推定され、Ca2+透過性の高いTRPチャネルでは広く起こっている現象かもしれない。Anoctaminを介したクロライドイオンの移動方向は単純に細胞内クロライド濃度に依存すると考えられる。そこで、感覚神経でも同様なTRPチャネル/ANO1の機能連関が起こっているものと仮説した。感覚神経細胞では細胞内クロライド濃度が高いので、ANO1活性化はクロライド流出をもたらし、さらに細胞の脱分極が進むと考えられる。TRPV1とANO1の機能連関では痛みの増強が起こると予想される。そこで、先ず、マウス感覚神経でTRPV1とANO1の発現を免疫染色法で解析し、多くの小型神経で共発現することを確認した。HEK293細胞にTRPV1, ANO1を共発現させてパッチクランプ法で解析するとカプサイシン投与によって細胞外Ca2+依存的なANO1活性化によるクロライド電流の活性化が観察された。通常のイオン条件でのカプサイシンによる内向き電流はANO1阻害剤で有意に抑制されたことから、カプサイシンによって引き起こされる内向き電流はTRPV1を介した陽イオン流入とANO1を介したクロライド流出の和を見ていると推定された。ANO1阻害剤によってマウス感覚神経のカプサイシンによる活動電位発生が有意に抑制され、カプサイシンの後肢投与による疼痛関連行動もANO1阻害剤で有意に減弱した。このように、TRPV1/ANO1機能連関は新たな疼痛増強メカニズムと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳脈絡膜上皮細胞で起こっているTRPV4/ANO1機能連関が広く存在するCa2+透過性の高いTRPチャネルとanoctaminチャネル連関の一つであることが、感覚神経でのTRPV1/ANO1機能連関の発見によって明らかになった。これは、大きな研究進展である。本新学術領域「脳内環境」では、脳内細胞においてTRPチャネル/anoctaminの機能連関を探索して行くことが必要であり、特にTRPV4/ANO1の機能連関の病態意義を検証していくことが今後の大きな課題と考えられる。同じく脳内でのTRPM2の脳内環境センシング機能解析もさらに検証していく必要があり、グリア細胞、特に、ミクログリアでTRPM2が強く発現しており、マクロファージと同様な感作機構を有していることが明らかになっていることから、その病態生理学的意義の解明を野生型マウスとTRPM2欠損マウスの比較解析から更に勧めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
脈絡叢上皮細胞におけるTRPV4, anoctamin 1 ① HEK293細胞にTRPV4および種々の炎症関連メディエイター代謝型受容体を共発現させて、炎症関連メディエイター投与によってTRPV4活性の増強がおこるかどうかをCa-imaging法、パッチクランプ法を用いて検討する。単離脈絡叢上皮細胞でも炎症関連メディエイター投与によってTRPV4活性の増強がおこるかどうかをCa-imaging法、パッチクランプ法を用いて検討する。さらに、炎症関連メディエイター投与によってクロライド電流(おそらくはanoctamin 1を介した)の増大が起こるかどうかを検討する。②脳髄膜炎モデルや脳室内へのプロスタグランジンE2の投与による脳脊髄液の産生・放出及び移動を野生型マウス・TRPV4欠損マウスで比較検討する。ミクログリア細胞におけるTRPM2血管結紮による脳梗塞モデルでの病変を野生型マウス、TRPM2欠損マウスで比較検討するとともに、脳温を変化させてその予後を検討する。脳梗塞による脳神経細胞死が起こると細胞内で産生された過酸化水素が細胞外に放出されて、周囲のマクロファージやミクログリアに発現するTRPM2活性化からサイトカイン等の炎症性因子が放出されてさらなる組織障害が引き起こされると推定される。そこで、以下の実験を行う。① 中大脳動脈結紮により脳梗塞モデルを作成する。② 梗塞巣でのTRPM2の発現を遺伝子レベル、蛋白質レベルで検討する。③ 梗塞巣周囲の生存細胞でのTRPM2機能(活性化温度閾値を含めて)をパッチクランプ法、Ca2+イメージング法で検討する。④ 梗塞巣での、マクロファージやミクログリアの貪食能サイトカイン放出能を野生型マウス、TRPM2欠損マウスで比較検討する。⑤ 梗塞巣の大きさを野生型マウス、TRPM2欠損マウスで比較検討するとともに、TRPM2阻害薬の梗塞巣サイズへの効果を検討する。
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Research Products
(6 results)