2014 Fiscal Year Annual Research Report
肝臓上皮組織の再生・維持機構の生体内多次元イメージング解析
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of polarity signaling during morphogenesis, remodeling, and breakdown of epithelial tubular structure |
Project/Area Number |
26112704
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 暢 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (50396917)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 再生医学 / 上皮管腔組織 / 肝臓 / 3次元組織構造 / 可視化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「上皮管腔組織」のモデルとしてマウス肝臓の胆管系および肝実質細胞(肝細胞)に注目する。これらの組織・細胞で各種の蛍光タンパク質レポーター/プローブを発現させる系と、多光子励起レーザー走査型顕微鏡による観察手法を組み合わせることで、生体多次元イメージング解析を実施する。これにより、(1)組織恒常性維持に関わる肝細胞の挙動、および、(2)前駆細胞依存性再生過程における肝前駆細胞/胆管系の挙動と機能の2つの視点に基づいて、それぞれの組織動態を精密に追跡・解析する。さらに、それらの事象の背景を成す分子メカニズムの一端を解明することを目的としている。平成26年度には、主に以下のような成果を得た: ・独自の臓器保定器具の作製や種々の観察条件の検討等を通じて、成体マウス肝臓において生体イメージング(intravital imaging)を実施するための新規プラットフォームを構築した。これを用いて、蛍光標識した肝細胞および胆管上皮細胞の挙動をライブ観察可能な実験系を確立した。肝細胞中の小器官の構造や、肝毒素投与により肝細胞に細胞死が誘導される様子を捉えることが出来た。また、蛍光標識低分子化合物を用いて生体肝臓中での胆汁の流路を可視化・観察することにも成功し、これが肝障害に伴い変化する様子を明らかにした。 ・マウス肝臓中の、胆管系をはじめとする種々の組織の3次元構造を単一細胞レベルで観察・解析可能な蛍光免疫染色系を構築した。これを、Cre-loxPシステムによる細胞系譜追跡系と組み合わせることで、障害時に誘導される胆管上皮組織リモデリングにおける組織動態を詳細に解析した。その結果、胆管系が増生する際、これを構成する細胞の増殖は一様に起こるわけではなく、その一部に、生体内において高い増殖能(クローン増殖性)を示す特殊な前駆細胞集団が存在し、これによる寄与が大きいことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた解析を、おおむね予定どおり実施し、十分な成果と新たな知見を得ることができた。 Tgマウスを用いた前駆細胞反応誘導実験については、Tgマウスの出産数が想定された通常の匹数よりも少なかったことや、食殺・給水事故等による産仔喪失が重なったことにより、再度の交配の必要が生じた。そのため、当初の予定よりも4箇月遅延することとなり、繰越を行った。その後は順調に交配・出産が進み、変更後の計画どおりに解析を完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究実施計画に沿って推進するが、以下の事項については特に重点的に解析を進める: ・生体イメージング系により肝臓中での胆汁の流路を可視化・観察する実験から、従来は胆汁うっ滞を伴わないと考えられていた種類の肝障害モデルにおいても、胆汁の流路である毛細胆管構造の局所的な崩壊が顕著に認められることが明らかとなった。これは既存の概念を超えた発見へとつながる可能性があるため、より詳細な観察を進めると共に、こうした現象が誘導される基盤と、その生理的意義についての解析を試みる。 ・障害時に胆管系が増生する際に出現する、高い増殖能(クローン増殖性)を示す特殊な前駆細胞集団は、組織全体の構造・動態を規定する上で特に重要な役割を担うと考えら得るため、詳細な性状解析を進める。また、組織中にこうした亜集団が出現する様式について、数理モデルを用いた解析を試みる。
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