2014 Fiscal Year Annual Research Report
上皮管腔組織が内包する細胞間相互作用を介したがん抑制システムの遺伝的基盤
Publicly Offered Research
Project Area | Regulation of polarity signaling during morphogenesis, remodeling, and breakdown of epithelial tubular structure |
Project/Area Number |
26112708
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大澤 志津江 京都大学, 生命科学研究科, 講師 (80515065)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2016-03-31
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Keywords | 内在性がん抑制 / 極性崩壊細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトのがんのほとんどは上皮由来であり、上皮がんの発生・進展には上皮細胞の頂底極性(apico-basal極性)の崩壊が深く関与している。一方、上皮管腔組織に極性が崩壊した細胞が生じると、正常な組織は極性崩壊細胞を積極的に組織から排除することでその恒常性を維持する可能性が近年示唆されている。我々のグループはこれまでに、嚢状の上皮管腔構造を示すショウジョウバエ成虫原基をモデル系として用い、このような細胞排除システムが実際に上皮管腔組織に存在することを明らかにしてきた。しかしながら、その分子基盤についてはいまだ不明な点が多い。本研究では、正常な上皮細胞が極性崩壊細胞を認識・排除する分子基盤を明らかにし、上皮管腔組織が内包するがん抑制システムの分子基盤を生体レベルで理解することを目指す。この目的を達成するために、本年度は、極性崩壊細胞を取り巻く正常細胞側に突然変異を導入し、これにより細胞排除システムに異常をきたす変異体を網羅的に単離・その責任遺伝子を解析した。その結果、興味深いことに、正常細胞側で機能する細胞膜上のリガンド様タンパク質を同定することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、大規模遺伝学的スクリーニングを実施し、極性崩壊細胞が生じた上皮管腔組織において機能する、細胞膜上のリガンド様タンパク質を同定することに成功した。本研究成果は、上皮管腔組織に生じたがん原性の極性崩壊細胞を認識するリガンドが存在することを示唆しており、「リガンドー受容体システムを介した上皮管腔組織における内在性がん抑制」という新たな概念を提起する可能性を秘めていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
極性崩壊細胞上に発現すると考えられる、内在性がん抑制機構における受容体を同定する。今回同定された細胞膜上のリガンド様タンパク質を認識し得る受容体は、ショウジョウバエにおいては32種類存在する。そこで、この32種類の受容体候補に対するRNAiを極性崩壊細胞において発現させ、細胞排除システムに異常をきたす変異体を単離・受容体を同定するスクリーニングを実施する。さらに、本実験により同定された「リガンドー受容体」システムが細胞排除を引き起こす分子機構を遺伝学的に解析する。
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