2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物表皮の幹細胞維持と分化の制御ロジックに関わる内的因子と新奇化合物の探索
Publicly Offered Research
Project Area | Multidimensional Exploration of Logics of Plant Development |
Project/Area Number |
26113507
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
鳥居 啓子 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 客員教授 (60506103)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植物科学 / 発生・形態形成 / 幹細胞 / 気孔 / 化合物スクリーン / 薬理 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
過去一年間、孔辺細胞特異的に強いGFP蛍光を発するライン(野生型背景)を用いて現在までに約1300種類の化合物をスクリーニングした。そのうち、32種類の化合物の効果の再現性を確認できた。それらは、(i) 気孔の数を増やす、(ii) 気孔のクラスター化を起こす、(iii)孔辺母細胞の対称分裂異常を起こし気孔の形態が異常になる、というどれかの表現型グループに属していた。現在のところメリステモイド細胞の発生を停止させる化合物は見つかっていない。
次に、上記の化合物の中でも今年度は特に、(i), (ii)の両方の効果を持ち、さらに植物体への生育阻害などの影響がない2つの化合物(E2とKC9)に関して、気孔発生に異常を示す突然変異体や形質転換体への影響を調べた。例えば、 KC9添加はspchおよびscrm/ice1 scrm2二重変異体のように気孔系譜をまったく作り出さない変異体には効果が見られなかった。その一方、atml hdg2二重変異体ではメリステモイド細胞が高頻度で発生停止するが、KC9添加により、これらメリステモイドメリステモイドは気孔へと分化した。er erl1二重変異体では、気孔密度は高くなることが知られるが、気孔はクラスターを形成しない。しかし、er erl1二重変異体ではKC9に対する感受性が亢進しており、極端な気孔クラスターを形成した。これらの結果から、これら化合物はERECTAファミリー受容体キナーゼを介した、気孔パターンを制御するシグナル伝達経路に作用する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度から連携研究者と技術員との二人三脚で、 化合物のスクリーニング系を立ち上げた。スクリーニングVersion1としては、孔辺細胞だけ強く緑色蛍光(GFP)を発色する特殊なシロイヌナズナを用いて、蛍光実体顕微鏡を用いる事により効率的に化合物の気孔の数や分布に対する効果を判断出来る系がつくれたと考えている。スクリーニングのスループットは低いが、学生などにも参加してもらうことにより、また、植物栽培チャンバーなどに投資することにより実験の効率を上げる事を検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、ワシントン大学薬理学部のShao En Ong教授のグループが、プロテオミクスの手法を用いて動物細胞からキナーゼ群(キノーム)を簡便にプロファイルする技術を開発した。Ong教授と研究代表者との共同研究により、これまでにシロイヌナズナ芽生えを用いてもこの手法(キノビーズ法)で約600のキナーゼを効率よくpull downできることを見出した。そこで現在、キノビーズ法を用いて、上記の化合物と結合するキナーゼを同定できるか、そしてそれらキナーゼが化合物のターゲットである可能性を探索中である。共同研究者を名古屋大ITbMへ2015年夏に短期招聘する予定である。さらに、化合物の作用の特異性と活性のさらなる向上を目指し、ITbMの合成有機化学グループとの共同研究としてこれら化合物のアナログを多数創出するプロジェクトも開始した。ここから得られる構造活性相関の情報を活用することで、今後は生理活性を維持したままで化合物を固定化したアフィニティークロマトグラフィーによるターゲット因子の同定も試みる予定である。
同時に、まだ多数残るITbMのケミカルライブラリー、およびITbMと提携関係にある理化学研究所 環境資源科学研究センターが多数所有する天然物ケミカルライブラリーのスクリーニングにも着手することにより、候補化合物を増やしたい。
最後に、通常の分子遺伝学的手法と異なる化合物の最も大きな利点には、形質転換植物(GMO)を作出する必要のないことが上げられる。予備実験から、我々が同定した化合物は、ナス科作物(タバコ)の芽生えにおいても、気孔の数を増やす効果が確認された。次年度には科・属など幅広く有用作物荷置ける効果を検討する予定である。
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Research Products
(5 results)