2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物発生におけるサーモスペルミンの機能の解明
Publicly Offered Research
Project Area | Multidimensional Exploration of Logics of Plant Development |
Project/Area Number |
26113516
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
高橋 卓 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (20271710)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | シロイヌナズナ / サーモスペルミン / 発生・分化 / 突然変異 / 翻訳制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
木部の過剰な分化と茎の伸長阻害を示す,シロイヌナズナの矮性変異株acl5の原因遺伝子は,サーモスペルミン合成酵素をコードする。acl5変異に対するサプレッサー変異sac51, 52, 53, 56の解析から,SAC51は転写因子,SAC52, SAC53, SAC56はリボソームタンパクRPL10, RACK1, RPL4をそれぞれコードし,いずれの変異もSAC51の翻訳促進を引き起こすこと,サーモスペルミンはSAC51の翻訳を促進して木部分化を抑えていることが示唆された。SAC51はmRNA 5’領域にuORFを持つ。サーモスペルミンは,uORFによるメインORFへの翻訳抑制効果を打ち消している可能性がある。 本研究では,サーモスペルミンの作用の詳細な分子機構の解明を目指す。具体的には,作用標的としてSAC51に注目し,uORFとサーモスペルミンによる翻訳制御機構およびSAC51遺伝子ファミリーの解析から,サーモスペルミンによる遺伝子の翻訳促進という,既知のホルモン作用とは全く異なる,植物の新しい発生ロジックの実体を明らかにする。 本年度は,サプレッサー変異sac57-dの原因遺伝子としてSAC51ファミリーのSACL3を同定し,sac51-d同様,uORFに点変異を見つけた。uORFの開始コドンを5’領域から除いてもサーモスペルミン応答性が残ったことから,サーモスペルミンの作用標的がmRNA 5’領域やリボソームRNAである可能性が高まった。 SAC51ファミリー4遺伝子の欠損4重変異株は矮化を示した。また,HPLC分析したところ,サーモスペルミンが過剰に蓄積していることがわかった。これらの転写因子は,サーモスペルミンによって翻訳が促進される一方,サーモスペルミン合成酵素遺伝子ACL5や木部分化の誘導に関わる遺伝子の発現抑制に深く関わると予想される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リボソーム変異に関する論文の投稿,発表に至ることができた。 また,SAC51遺伝子ファミリーの4重変異の作出に成功し,興味深い結果を得て,さらなる研究が進展している状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
作出できたSAC51遺伝子ファミリーの4重変異のうち,1つ(SACL1)については弱い変異であると予想されることから,ゲノム編集による遺伝子破壊を試み,強い変異を作出して,サーモスペルミンの作用における,この遺伝子ファミリーの機能を包括的に明らかにしたい。 また,サーモスペルミンが直接RNAと相互作用すると想定し,RNAアプタマーの選抜,同定を進める。sac51-d sac57-d二重変異が芽生え致死になるという結果を得ており,その発芽直後の遺伝子発現解析から,転写因子SAC51やSAC57/SACL3の制御の標的遺伝子の同定も行う。 サーモスペルミンの作用標的としては,SAC51及びその遺伝子ファミリーしか見つかっていないが,ACL5やSAC51相同遺伝子はゼニゴケにも存在する。それらの遺伝子についてもゲノム編集により破壊することにより,維管束植物に限定しないサーモスペルミンの本質的な機能解明を目指す。
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