2014 Fiscal Year Annual Research Report
植物発生・パターン形成に関する数理的研究
Publicly Offered Research
Project Area | Multidimensional Exploration of Logics of Plant Development |
Project/Area Number |
26113521
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
藤田 浩徳 基礎生物学研究所, 共生システム研究部門, 特別協力研究員 (10552979)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 植物パターン形成 / 数理モデル解析 / 茎頂分裂組織 / 気孔分化パターン / 花原基ABCモデル / オーキシン極性輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 茎頂分裂組織(SAM)パターン形成: SAMパターン形成において細胞分裂(空間拡張)によるパターンの変化様式(増殖モード)が重要であることを今までに明らかにしてきたが、その制御はよくわかっていなかった。今回線形のダイナミクスを用いることにより、増殖モードはパターンの増幅速度ではなく、むしろパターン増幅が引き起こされる波数(空間周期)と強く相関することが示された。 2. 気孔パターン形成: 気孔系譜細胞の分化制御ダイナミクスの数理モデルを、実験結果に基づいて構築し、2次元空間における数値シミュレーションにより、野生型やtmm, erecta-tripleなどの変異体、もしくはEPF2シグナルペプチド投与に対する応答等、多くの条件における実験結果をうまく再現できた。この結果より、気孔パターン形成は反応拡散パターンで理解できることが示された。 3. 花原基whorlパターン形成: シロイヌナズナにおけるクラスAとクラスC遺伝子発現領域の境界形成に関して、実験的知見に基づいてWUS, AP1, AP2, AG, MIR172等を組み込むことにより数理モデルを構築した。そして一次元空間での数値シミュレーションにより、野生型およびそれぞれの変異体における発現パターンを再現できることを示した。これにより、モデルの基本枠組みの構築を行った。 4. オーキシン極性輸送の形成機構: 植物ホルモンのオーキシンとその輸送体PIN1のダイナミクスにおいて、細胞内に空間構造を組み込んだ数理モデルを構築し、一次元細胞列においてその振舞いを数値シミュレーションにより網羅的に検証した。その結果、このモデルはオーキシン極性輸送やオーキシンスポット形成等のパターンを示し、以前の細胞内オーキシンが一様のモデルに比べ遥かに多様なパターンを形成することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
(3)花原基whorlパターン形成、ではクラスA遺伝子とクラスC遺伝子の発現パターンに関するモデルの基本的枠組みを確立した。また(4)オーキシン極性輸送の形成機構、に関しては細胞内に空間構造を導入したモデルにおいて、1次元空間での振る舞いを網羅的に検証した。従って以上の2つの研究課題に関してはおおよそ当初の目的通りの達成度であると考えられる。 (2)気孔パターン形成、に関してはモデルの構築、および数値シミュレーションによる気孔パターンの再現に関しては予定通り達成できた。パターン形成機構の検証に関しては、まだ達成してはいないものの、現在順調に解析が進んでいる。従って当初の予定からは若干の遅れは認められるものの、それは比較的軽微である。 (1)茎頂分裂組織(SAM)パターン形成、に関しては線形のダイナミクスに関しては増殖モードとパターン増幅の波数との相関を確認した。しかしながら、さらに一般的に非線形ダイナミクスに関しての検証ができておらず、従って若干の研究の進展が遅れている。 以上の様に、一部の研究課題においては、当初の目的に比べ若干の遅れが認められる。その主な原因としては、本研究課題で雇用した研究員がその期間中かなりの長期間(4ヶ月ほど)体調不良により研究の遂行が事実上困難となり、その間ほとんど研究作業ができなかったことが大きく影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)茎頂分裂組織(SAM)パターン形成: なるべく早い段階で非線形ダイナミクスにおいて、増殖モードとパターン増幅の波数との相関の検証を行う。その後これまで得られたSAMパターン形成に関する知見をもとにして、wus変異体の表現型の合理的な説明を行う。 (2)気孔パターン形成: パターン形成機構の解明のために、パターン密度の予測のための理論的手法の確立を行う。それが確立した後には、当初の予定の、組織間でのパターン制御の多様性に関して、シロイヌナズナの葉と茎を例として取り上げつつ検証を行う。 (3)花原基whorlパターン形成: これまでの解析で基本的な数理モデルの枠組みは完成したので、これを用いることにより当初の予定通り植物種によるクラスA遺伝子とクラスC遺伝子の発現パターンの多様性についての検証を行う。また可能ならばクラスB遺伝子に関してもモデルに組み込むことにより、より統合的なモデルに発展させる。 (4)オーキシン極性輸送の形成機構: 1次元細胞空間においてのモデルの詳細な振る舞いが理解できたので、2次元空間において同様に詳細なパターンの検証を行う。それによりオーキシン極性輸送とオーキシンスポットパターンとの切り替え制御機構についての検討を行い、オーキシンによるパターン形成機構の理解を深めたい。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Oriented cell division shapes carnivorous pitcher leaves of Sarracenia purpurea.2015
Author(s)
Fukushima, K., Fujita, H., Yamaguchi, T., Kawaguchi, M., Tsukaya, H., and Hasebe, M.
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Journal Title
Nature Communications
Volume: 6
Pages: 6450
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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